警察トップが兵庫県政をめぐる混乱に一石を投じた。斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などを調査する百条委員会の委員を務めた竹内英明元県議が亡くなり、自殺とみられると報じられた(享年50)。背景にSNSでの誹謗中傷があったとされる。竹内氏の長年の知人が言う。
「彼の自宅には脅迫のような電話が掛かってきたり、ピンポンダッシュといった悪質なイタズラが相次いだり……。お子さんが外出すら怖がるようになり、ショックを受けていたようです」
昨年11月の知事選で斎藤氏を支援する立場で出馬し、竹内氏を強く批判したのが「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏だ。死亡が報じられた日も「県警からの継続的な任意の取り調べを受けていました」「明日逮捕される予定だったそうです」と投稿した。
「これに対して斎藤知事は何も言わず、『誹謗中傷はしてはならない』という一般論に終始しました」(全国紙社会部記者)
そんななか、兵庫県警トップの村井紀之本部長(57)が県議会の答弁に自ら立った。「竹内氏については、容疑者として任意で調べをしたこともないし、ましてや逮捕するといった話は全くない。全くの事実無根」と明言。立花氏はSNSの書き込みやYouTubeの動画を削除し、謝罪する展開となった。
「本部長自身の答弁も、個別の事案への言及も異例で、『明確なメッセージを出すことで、誹謗中傷を止めたかった』と語ったそうです」(同前)
村井氏は兵庫県伊丹市出身。東京大学法学部を卒業して警察庁に入った。青森県警本部長、内閣官房内閣審議官を歴任したエリート警察官僚だ。
そんな村井氏にはもう一つの顔がある。自身が作った楽曲を配信するYouTuberなのだ。
チャンネル名は「青森応援AOチャンネル♪」で、県警本部長を務めた青森にまつわる曲を作詞作曲して投稿する。「あくまで本部長の個人チャンネル」(兵庫県警本部)で顔出しはしていないが、投稿主が警察関係者であることは明かしている。
青森県の名所の映像を使い、歌声は音声合成ソフトで編集。昨年10月にアップされた楽曲は〈さらばヨーカドー【この声を聴け】〉と題され、イトーヨーカドーが青森から撤退することを嘆く歌詞だ。チャンネル登録者数は約400人で動画の再生回数は数百回程度にとどまるものが多いが、楽曲内容は多岐にわたる。
「青森の応援はライフワークで、SNSも積極的に宣伝に活用している」(担当記者)という。それゆえネットの誹謗中傷も看過できなかったのか。
兵庫県警は、先の知事選での斎藤陣営の公職選挙法違反(買収)容疑の告発状を神戸地検とともに受理している。立花氏の投稿を真っ向から否定した県警トップが今後、どう捜査の指揮を執るかにも注目が集まる。
※週刊ポスト2025年2月7日号