1月末から中華圏の旧正月・春節が始まります。中国人観光客のビザ緩和に関して反対意見も出ているようですが、筆者が懸念しているのが「外国免許切替」問題です。いとも簡単に日本の運転免許を取得できてしまうこの制度は、まるで「免許ロンダリング」で、裏技的な意味もあります。問題点を解説します。(モータージャーナリスト/安全運転インストラクター 諸星陽一)
【裏校?闇校?運転免許試験場の周りで営業している「謎の塾」の正体】
● 訪日中国人に大人気 「外免切替」は免許ロンダリング?
「なんでいつも日本政府は外国人には甘いのか」「たった10問の学科試験って、どうなってんだ?」
外国で運転免許を取ってから日本の免許に切り替えるのがウルトラ簡単で、特に訪日中国人に大人気というニュースを読んだときの、筆者の率直な感想です。
皆さんはどんな方法で運転免許を取得しましたか? 日本では指定自動車教習所を卒業して運転免許を取得する人が約97%と言われています。順調に卒業しても約30万円もの費用がかかります。期間は合宿免許で最短だとATで14日間、教習所で最長だと9カ月にも及びます。
運転免許取得に掛かる費用は、アメリカだと5000〜6000円、中国だと10万〜16万円、韓国は9万円程度、ドイツは日本と同じくらいで、スイスは世界一高くて44万円程度と言われています。日本は、取得費用が高い国と言えるでしょう。
にもかかわらず、ある手段を取れば、たった4600円で日本の運転免許を取得できてしまいます。いったい、どうなっているのでしょうか?
● カンタンな外免切替の学科 全10問中7問正解できれば合格
順を追って説明しましょう。外国人が日本で運転する場合、「国際運転免許証」を取得するのが通常です。国際運転免許証は、道路交通に関するジュネーブ条約を締結している国で発行され、それぞれの国で有効。ただし例外として下記もOKだと警察庁のホームページに書かれています。
自動車等の運転に関する外国(国際運転免許証を発給していない国又は地域であって日本と同等の水準にあると認められる免許制度を有している国又は地域)の免許証(政令で定める者が作成した日本語による翻訳文が添付されているものに限る。)。現在、スイス連邦、ドイツ連邦共和国、フランス共和国、ベルギー王国、モナコ公国及び台湾が対象となります。
ここで焦点になるのが、ジュネーブ条約に加盟していない中国やロシアなどが発行した免許の場合です。国際運転免許も取得できない、例外措置の適応でもないからです。
とはいえ、すでに外国で免許を取得している場合は、日本の運転免許に切り替えることで日本の運転免許証を取得できます。これを、「外国免許切替」(外免切替)と言います。
今、この外免切替が一部で問題視されています。外免切替は試験(正式には試験ではなく確認という文言が使われている)を受けずに可能な場合と、学科確認や技能確認を受けないとならない場合があります。
外免切替の試験が「不要」なのは、アメリカ(オハイオ州、オレゴン州、コロラド州、バージニア州、ハワイ州、メリーランド州及びワシントン州に限る)、イギリス、ドイツ、韓国、台湾など29の国と地域です。アメリカのインディアナ州は技能確認のみが免除されています。
これ以外の国や地域の場合、学科確認と技能確認を受けなければ外免切替ができません。とはいえ実は、学科も技能も「超」が付くほど簡単です。まず、この点が大きな問題です。
学科は全10問中7問正解できれば合格。技能は手持ち100点からの減点法で、70点まで持ち点が残れば合格です(危険行為の場合は確認中止で不合格となることも)。技能では、免許センターのコース約1.2kmの距離を走行します。
思い出してみてください、日本人が運転免許を取得する場合は、学科試験は全95問あり100点満点で90点以上なら合格。技能試験は100点からの減点法で70点以上あれば合格です。技能はコース内ではなく路上で行われ距離は4.5km以上を走行します。