芸能界を引退した中居正広氏の女性トラブルをめぐる問題で、27日、フジテレビの港浩一社長が2度目の記者会見を開いた。港氏と会長の嘉納修治氏が引責辞任し、新社長にフジ・メディア・ホールディングス(HD)専務の清水賢治氏が28日付で就任すると発表した。元テレビ東京社員で、桜美林大学教授の田淵俊彦さんは「2度目の記者会見は、フジテレビのガバナンスが非常に危ういものであることが改めて示された。会長・社長の辞任でフジテレビが簡単に再生するはずがない」という――。
【写真】記者会見に集まった報道陣。キレる記者、怒鳴る記者も…
■10時間半続いた会見、日枝氏は出席せず
1月27日午後4時から、フジテレビによる「やり直し会見」がおこなわれた。前回17日の緊急社長記者会見の際には、参加メディアを「制限」し、動画撮影も「禁止」としたが、今回は参加メディア「制限なし」、動画撮影も「可能」とした。
しかし、会見は10時間半に及び、怒声が飛び交う混乱を極めた。それは誰もが怒りたくなるほどの、「開く価値のない会見」だったからだ。
フジの労組からはすべての取締役の出席が求められたが、結局、出席したのは、フジテレビの嘉納修治会長、遠藤龍之介副会長、港浩一社長、親会社のフジ・メディアHDの金光修社長の4人だった。求められた取締役相談役、日枝久氏の出席は実現しなかった。
前回のプレジデントオンラインで、私はいかにフジのガバナンスが劣っているかと指摘し、日枝体制の根深さに焦点を当てた。そしてこの「日枝体制」との決別しか、フジの生き残りの道はないと述べた。であるから、今回の記者会見のポイントは「日枝体制」がどうなるのかという一点に尽きると私は考えていた。
記者会見に先立って同日におこなわれた取締役会で、嘉納修治会長と港社長の辞任が決定した。そして新社長は、清水賢治氏が就任する。清水氏は現在、フジ・メディアHDの専務取締役を務めている。
1983年にフジテレビに入社し、多くの名作アニメをプロデュースしてきた。「Dr.スランプ アラレちゃん」「ドラゴンボール」「ちびまる子ちゃん」「こちら葛飾区亀有公園前派出所」「幽☆遊☆白書」など多数の大ヒットアニメをプロデュースした。
■アニメ畑を歩んできた新社長
私はこの人事を聞いて「甘い」と思った。
フジの現社員やOBに取材をおこなったところ、「清水さんはもともと次期社長の最有力候補とみられてきた。それが早まっただけ」「社長候補になっている段階で、すでに日枝氏の息がかかった人物」「日枝チルドレンの中では、まだまし」という証言が得られた。
日枝氏の取締役相談役の辞任はなかった。したがって、私が期待した「日枝体制」からの決別はかなえられなかったと判断せざるを得ない。一番の違和感は、経営陣から“わざと”ではないかと思ってしまうほど「日枝氏」の名前が出なかったことだ。