日本最強の圧力団体
「俗に『2025年問題』とも言われますが、2025年には団塊の世代の全員が75歳を迎えて後期高齢者医療制度の対象となります。医療費の自己負担が原則2割から1割に減って、病院に行くハードルが下がるため、その分だけ現役世代が支払う社会保険料はさらに増えるでしょう」
【一覧】1000万円超えも…日医連から大物政治家たちへの「献金リスト」
こう分析するのは、慶應義塾大学名誉教授の印南一路氏だ。
厚生労働省のデータによると、2022年度の国民医療費は約46兆7000億円で過去最高を記録した。そのうちの約4割に当たる18兆円が75歳以上に使われていて、一人当たりでは年間で約94万円にも上る。
ただし後期高齢者医療制度を利用すれば、患者の自己負担は1割の9万4000円で済む。それ以外の約85万円のうち43万円を公費(税金)、34万円を現役世代が支払った各健康保険組合からの支援金で賄っているのが現状だ。
「80代になると年間の医療費が100万円を超えるというデータもあり、明らかに医療が過剰になっていると言えるでしょう。
その一因が、医療機関の出来高払い制度。診察や検査をやればやるほど病院が儲かる仕組みになっているので、医師もなるべく受診させたいというインセンティブが働くわけです」(慶應義塾大学教授の土居丈朗氏)
現役世代が必死に働いて納めた税金と社会保険料が、過剰な診療を介して医療機関へと流れ、最終的には医師を富ませる—この構図は実際のデータでも確認できるという。東京新聞編集委員で、医療行政を長年取材してきた杉谷剛氏が解説する。
「2023年に財務省が約1万8000ヵ所の無床診療所(入院設備がない小さなクリニック)を調べたところ、2022年度の平均収益は2年前から2000万円アップした1億8800万円で、経常利益率は中小企業の2倍を超える8.8%、内部留保に至っては平均で1億2400万円もありました。
また勤めている医師の平均年収は1106万円で、病院長だと2540万円になる。明らかに儲けすぎだと言えるでしょう」
国民負担率が50%に近い現状を踏まえるならば、儲けすぎている医師への診療報酬をカットして、社会保険料を下げるのが道理だろう。しかし思い切った改革を断行しようにも、高い壁が立ちはだかる。「日本最強の圧力団体」と言われる日本医師会(日医)だ。
約18万人の医師によって構成される日医は、傘下の政治団体・日本医師連盟(日医連)を通じて活発に政治活動を行っている。強大な政治力と資金力を活かして、自らの利益となる政策を推進したり、不都合な制度改正を潰したりしているのだ。
(文中一部敬称略)
「週刊現代」2025年1月25日号より
自民党議員に1000万円単位で献金をバラまき、政治家や官僚に意向を呑ませる――後編記事『1000万円単位で献金をバラまく…日本医師会と大物政治家の「蜜月ぶり」を明かそう』では、日医連がいかに政治と密接に結びついているか明かしていこう。
週刊現代(講談社・月曜・金曜発売)