石破茂首相が1月11日、インドネシアを訪問し、両国の安全保障分野での協力が確認された。目に見える成果だったといえるのは高速警備艦の供与だが、護衛艦の共同開発も現実味を帯びてきている。
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日本の生命線と言える南シナ海で脅威を増す中国への牽制として、両国の必須の検討課題だが、費用分担などの問題が立ちはだかる。
インドネシアは「日本の生命線」
日本政府は、「法の支配」「航行の自由」などを柱とする 「自由で開かれたインド太平洋(FOIP) 」構想を掲げ、米国や豪州、インドなどとの連携を深めてきた。この枠組みのもと、国家が重要視する海上交通ルート(シーレーン)の要衝であるインドネシアとの防衛協力を強化することは、地域安定に不可欠となっている。
日本が海外から輸入する原油や液化天然ガス(LNG)などのエネルギー資源、食品、工業部品の多くは海上輸送に依存している。とりわけマラッカ、スンダ、ロンボクの3つの海峡を抱えるインドネシアとのパートナーシップは日本にとって死活問題だ。
今回の石破首相訪問も協力関係を確認することが主要な目的の一つであり、ある防衛省幹部は「この海域で武力紛争やテロ、海賊行為が激化すれば、日本国内の物流は一気に麻痺する。シーレーンが守られない限り、日本経済や市民生活は立ち行かなくなる」と警鐘を鳴らす。
中国の「九段線戦略」の脅威
一方で、この海域は中国による南シナ海進出の影響を大きく受ける地域でもある。中国は南シナ海のほぼ全域を自国領海と主張する「九段線」戦略を進めており、人工島造成や海警船による巡回活動を重ね、既成事実化を進めている。
インドネシアでは北端のナトゥナ諸島近海で中国漁船が操業し、現地の海上保安当局とのトラブルが頻発している。
中国は南シナ海での実効支配を強めつつ、東南アジア諸国連合(ASEAN)へのインフラ投資や経済支援を通じて影響力を拡大している。ASEAN内部でも対中融和的な国と警戒感を募らせる国に分かれ、「足並みの乱れ」が顕在化する場面もある。
インドネシアは巨大人口と経済力を背景に、ASEANの「盟主」を自任しているが、中国からの投資・市場を無視できず、一方でナトゥナ近海の領海保全は譲れないため、バランス外交に苦慮しているのが実情だ。