映画には、人生の光と闇、喜びと悲しみ、そして希望と絶望が凝縮されています。人生の意味を問いかける、深く心に刻まれる作品は数多くありますが、今回は、悲劇的な結末を迎える主人公を通して、私たちに”生きる”ということを改めて考えさせてくれる映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』をご紹介します。
母と子の愛が生んだ悲劇：『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のあらすじ
アメリカに移住してきたチェコ移民のセルマ（ビョーク）。視力を失いつつある彼女は、同じ運命を辿る息子ジーンの目の手術費用を稼ぐため、工場で懸命に働いていました。ミュージカルを心の支えに、同僚のキャシー（カトリーヌ・ドヌーヴ）や周囲の人々に支えられながら、慎ましくも心穏やかに暮らしていたセルマ。しかし、彼女の運命は残酷な方向へと進んでいきます。
チェコから移民してきたセルマと息子のジーン。工場で働きながら息子の目の手術費用を貯めていた。
絶望の先にある希望：『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の見どころ
ラース・フォン・トリアー監督の傑作『ダンサー・イン・ザ・ダーク』。第53回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した本作は、ミュージカル映画という形式を取りながらも、主人公セルマの壮絶な人生を描いています。
衝撃のラストシーンと”鬱映画”というレッテル
絞首刑に処されるという衝撃的なラストシーン、そして全編を覆う不条理な展開から、「鬱映画」「胸くそ映画」という評価も耳にします。しかし、本当にそれだけでしょうか？映画評論家の佐藤一郎氏は、「セルマの運命は確かに悲劇的だが、彼女の行動原理は母性愛という揺るぎない希望に支えられている。だからこそ、観客は深い感動を覚えるのだ」と述べています。
希望の象徴「最後から2番目の歌」
セルマが息子の手術成功を聞き、絞首台の上で歌う「最後から2番目の歌」。それは、絶望の淵にあっても希望を失わない人間の強さを象徴しています。「これは最後の歌じゃない。私たちがそうさせない限り、最後の歌にはならないの」という歌詞は、まさにセルマの魂の叫びであり、観る者の心に深く響きます。
セルマを演じたビョークは、本作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。
ビョークの熱演と心を揺さぶる音楽
主演のビョークは、本作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。彼女の鬼気迫る演技と、心に深く刻まれる音楽は、この映画の感動をさらに深めています。音楽評論家の田中美咲氏は、「ビョークの歌声は、セルマの心の叫びをそのまま表現しているようだ。まるで彼女の魂が歌っているかのよう」と絶賛しています。
生きる意味を問う：『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が私たちに伝えるもの
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』は、決して単なる悲劇を描いた映画ではありません。過酷な運命に翻弄されながらも、愛する息子のために生き抜いたセルマの姿は、私たちに「生きる」とは何かを問いかけます。この作品が、あなたの心に深く響くことを願っています。
