北海道の“日本一金持ち”の村で……
バラエティ番組で昨年、「年収が高すぎる日本一金持ちの村」と紹介された北海道の更別村。
【税金10億円が…】あり得ない…! 雪道を走行できず利用される見込みの薄い「配送ロボット」
実はFRIDAYデジタルでも、農業を基幹産業とする人口約3100人のこの村を取り上げている。もちろん「日本一裕福な村」としてではない。デジタルを活用した課題解決や地方創生の取り組みへの支援を目的とした『デジタル田園都市国家構想交付金』(デジ田交付金)を10億円以上も得ている自治体としてだ。
昨年11月公開の「地方創生交付金に群がるコンサル&食い物にされる自治体」と題する記事で、更別村がデジ田交付金を財源に取り組む「スーパービレッジ構想」事業の運営主体『ソーシャルナレッジバンク合同会社』について触れた。
スーパービレッジ構想の事業費のほとんどは、ナレッジバンク社に渡っている。同社の代表社員は、スーパービレッジ構想の策定段階から事業を主導する東京の建設コンサルタント『株式会社 長大』(東京都中央区)。このコンサルは事業の「受注者」であり、事業「発注者」のナレッジバンク社代表社員でもあるのだ。
村議会議員は「利益相反の構造がある」と批判。昨年6月から同社に対して、事業費などの開示を求めていた。
そのナレッジバンク社が記事の公開から2週間後、’23年度の事業内容と費用をようやく公式サイトで公表した。
事業費一覧には「地域ポイント発行サービス/4579万円」「待ち時間のない医療サービス/7696万円」「共助型地域交通物流システム/9635万円」などが、運営費一覧には「楽しい麻雀/24万円」「楽しいカラオケ/90万円」「無料スマホ貸し出し/465万円」などが並ぶ。
情報開示を求めていた議員は「9月の議会で’23年度の一般会計決算が通った後に事業費の内訳を公表するのは、後出しじゃんけんのようでおかしな話」と憤る。
それにしても、デジ田交付金を活用した事業が「麻雀」や「カラオケ」とは……。他にも、無料で貸し出す中古のスマホ800台の購入、雪道を走行できず利用される見込みの薄い配送ロボットのレンタルや実証実験などにも交付金が使われている。
「更別村の住民は交付金事業を理解し、実際にサービスを利用して効果を実感しているんでしょうか。
そうではないとすれば、たとえば稼働していない配送ロボットは交付金の無駄遣いに終わる可能性がある。中古スマホはいずれ、村が買取業者に売るなどして処分せざるを得なくなるかもしれません」
こう指摘するのは、会計学が専門で地方公共団体の監査実務や内部統制に詳しい、日本大学の紺野 卓教授だ。
「他の媒体も含め更別村に関する記事に目を通した限りでは、村長は非常に前向きでやる気のある人物という印象です。自治体トップの頑張る姿勢は重要ですから、積極的なのはいい。ただし、株式会社の社長と違い、リスクを負うぐらいやる必要はない。税金を使うわけですから。
更別村のスーパービレッジ構想を実際に動かしているのは、事業の受注者であるコンサル会社ですよね。しかし、全ての責任は委託者、すなわち更別村にある。『コンサル任せでした』では済まされません。
石破(茂)総理が、昨年の地方創生に関する閣僚会議で、『どの町も東京のコンサル頼みでは非常にまずい』といった趣旨の発言をしました。総理も十分に認識しているということでしょう」(紺野 卓教授・以下同)