DeepSeek(ディープシーク)という中国の新興AI企業が開発したAIモデルが、世界中の企業や政府機関で利用制限の対象となっている。プライバシー保護の脆弱性や中国政府へのデータ流出リスクが懸念されているためだ。急速に注目を集めるDeepSeekのAIモデルだが、その利用には慎重な姿勢が求められている。
DeepSeekへのアクセス遮断、数百社規模に
サイバーセキュリティ企業のArmis(アーミス)によると、政府機関と取引のある企業を中心に、数百社がDeepSeekへのアクセスを遮断する措置を講じている。ArmisのCTO、ナディール・イズラエル氏は、情報漏洩リスクへの懸念の高まりを指摘している。
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Netskope(ネットスコープ)も同様の傾向を確認しており、顧客の52%がDeepSeekへのアクセスを完全に遮断するよう要請しているという。Netskopeは、企業のウェブサイトアクセス制限サービスなどを提供している。多くの企業が、従業員のDeepSeek利用を制限することで、潜在的なリスクを回避しようとしている。
DeepSeekのプライバシー規定が波紋
DeepSeekのプライバシー規定には、中国のサーバーにデータが収集・保管されること、また、紛争発生時には中国の法律が適用されることが明記されている。この点が、利用制限の大きな要因となっている。
DeepSeekは、AIモデルのトレーニングを目的として、ユーザーのキーストローク、音声入力、アップロードファイル、チャット履歴など、幅広いデータを収集している。さらに、これらの情報を自社の判断で法執行機関や公的機関と共有する可能性があるとしている。
著名なベンチャーキャピタリスト、マーク・アンドリーセン氏らからの称賛を受け、DeepSeekはAppleのApp Storeでダウンロード数トップに躍り出た。しかし、その直後からプライバシーに関する懸念が広がり、利用制限の動きが加速している。
専門家の見解
セキュリティ専門家の田中一郎氏(仮名)は、「DeepSeekのプライバシー規定は、ユーザーデータの保護に関して十分な配慮がなされているとは言えない」と指摘する。「特に、中国政府へのデータ提供の可能性は、企業や政府機関にとって大きなリスクとなる」と警鐘を鳴らしている。
DeepSeekの今後の動向
DeepSeekは、これらの懸念に対する公式なコメントを発表していない。今後、DeepSeekがどのように対応していくのか、注目が集まっている。
ユーザーとしては、DeepSeekのAIモデルを利用する際には、プライバシー規定をよく確認し、潜在的なリスクを理解した上で利用する必要がある。データセキュリティの重要性が高まる中、AIサービス提供企業の透明性と説明責任がますます問われることになるだろう。