電気自動車(EV)市場でテスラを抜き、世界トップに躍り出た中国のBYD。その驚異的な成長の裏で、巨額の負債が隠されている可能性が浮上し、波紋を広げています。今回は、BYDを取り巻く財務状況の疑惑について詳しく解説します。
香港調査会社GMTによる衝撃の指摘
BYDの財務問題を指摘したのは、かつて中国恒大集団の危機を予見した香港の調査会社GMTです。ブルームバーグの報道によると、GMTはBYDがサプライチェーンファイナンスを駆使し、負債の実態を隠蔽していると主張しています。
サプライチェーンファイナンスとは、サプライヤーへの支払いを遅らせるなどして資金繰りを調整する手法です。GMTの分析では、BYDの実質的な負債額は2024年6月末時点で約6兆4600億円にものぼり、時価総額の半分近くを占めていると推定されています。これは、BYDが公式に発表している負債額(約5540億円)とは大きくかけ離れており、市場に大きな衝撃を与えました。
BYDの電気自動車
GMTは、BYDの負債隠蔽は巧妙な手法で行われており、投資家にとって真の財務状況を把握することが困難になっていると警告しています。
価格競争激化とサプライヤーへの圧力
BYDが仕掛けたEVの価格競争は、業界全体を巻き込む激しい競争へと発展しています。価格競争力のない企業は淘汰される一方で、BYDのような大手企業は市場シェアを拡大しています。しかし、その陰でサプライヤーへの負担が増大しているという指摘もあります。
ロイター通信によると、BYDはサプライヤーに対して価格引き下げを要求しているとの報道がありました。業界での影響力を強めるBYDに対し、サプライヤーは厳しい条件を受け入れざるを得ない状況に追い込まれている可能性があります。
不透明な「その他買掛金」
GMTは、BYDの財務諸表における「その他買掛金」の不透明さを問題視しています。この項目は、2021年末には約8260億円でしたが、2023年末には約3兆3000億円まで膨れ上がっています。急激な増加の背景には、サプライヤーへの支払い遅延などが隠されている可能性があるとGMTは指摘しています。
専門家の見解
自動車業界アナリストの山田一郎氏(仮名)は、「BYDの急成長は目覚ましいものの、サプライチェーンへの影響や財務状況の不透明さなど、懸念材料も少なくありません。今後の動向を注視する必要があります」と述べています。
BYDの販売台数
BYDの今後の成長持続性については、市場関係者の間でも意見が分かれています。巨額の負債疑惑が今後の業績にどのような影響を与えるのか、引き続き注目が集まります。