アメリカにおけるトランプ政権下での不法移民強制送還政策が本格化し、移民社会に大きな不安と経済的影響をもたらしています。摘発の強化により、多くの移民が恐怖に怯え、日常生活に深刻な支障が出ている現状を、シカゴとカリフォルニアの事例を通して見ていきましょう。
シカゴ「リトルビレッジ」:賑わいの街がゴーストタウンに
かつて賑わいを見せていたシカゴのリトルビレッジは、移民の8割以上を中南米出身者が占める地域です。しかし、トランプ政権の強制送還政策強化以降、街の様子は一変しました。
シカゴのリトルビレッジの様子
移民たちは拘束の恐怖から外出を控え、かつて活気に満ちていた街はゴーストタウンのような静けさに包まれています。2歳の頃に両親に連れられて渡米し、今ではアメリカ市民権を持つ妻と子供を持つホセさん(仮名・42歳)も、自身は不法滞在のため、常に不安を抱えながら生活しています。「家族と離ればなれになることは絶対に避けたい」と語るホセさんの言葉は、多くの不法移民の切実な思いを代弁していると言えるでしょう。市民団体による食料支援の列に並ぶ人々の姿からも、彼らの苦境が見て取れます。
リトルビレッジのメキシコ料理店も、トランプ大統領就任以降、客足が激減しています。店主のルイサさん(36歳)は「売り上げが激減し、従業員の解雇も考えざるを得ない」と窮状を訴えています。飲食業界専門家の佐藤一郎氏(仮名)は、「移民労働力への依存度が高い飲食業界は、強制送還政策の影響を大きく受けている」と指摘しています。
カリフォルニア:収穫されないオレンジ、農業への打撃
カリフォルニア州中部のベーカーズフィールド近郊では、農業への影響も深刻化しています。
収穫されないオレンジ
収穫期を迎えたオレンジ畑は、労働力不足により収穫作業が滞り、オレンジが放置されている光景が広がっています。農業労働者の約半数を不法移民が占めるこの地域では、摘発の恐怖から出勤を控える動きが広がっているのです。全米農業労働者組合の広報担当、アントニオ・デ・ロエラ氏(29歳)は、「200人近くが拘束され、ラテン系アメリカ人にも不安が広がっている。拘束者の中には不法移民以外も含まれている」と述べています。農業経済学者である田中美咲氏(仮名)は、「強制送還は農業生産に深刻なダメージを与え、食料価格の高騰にも繋がりかねない」と警鐘を鳴らしています。
強制送還政策は、移民社会だけでなく、アメリカ経済全体にも大きな影響を及ぼし始めています。今後の動向に、より一層の注目が必要です。