東京一極集中は、日本社会における長年の課題です。総務省が発表した2024年の人口移動報告によると、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)への転入超過数は13万人を超え、地方創生の取り組みにも関わらず、この流れは依然として止まっていません。特に女性や若年層の流出が目立ち、地方の活性化に向けた更なる対策が求められています。
地方から東京圏への人口流入:止まらない現状
政府は地方創生に10年間取り組んできましたが、2024年の東京圏への転入超過は13万人を超え、地方からの人口流入は依然として深刻な状況です。2014年の地方創生本格始動以降、一部地域では移住者の増加によって人口減少に歯止めがかかった事例や、コロナ禍において一時的に都心部からの転出が増加するなど、明るい兆しも見られました。しかし、2022年以降は3年連続で東京圏への転入超過が拡大しており、2027年度までにこの状況を解消するという政府目標の達成は困難な状況となっています。
東京都心の高層ビル群
女性と若年層の流出:地方創生の新たな課題
2024年に転出超過となった40道府県のうち、32道県では女性の方が男性よりも超過数が多く、女性の人口流出が目立っています。さらに、東京圏への転入超過を世代別に見ると、15~29歳の若年層が大半を占めています。進学や就職を機に、女性や若者が地方を離れ、東京圏へ移住する傾向が顕著になっていることが分かります。地方経済の活性化には、若年層、特に女性の定着が不可欠です。地方自治体と連携し、より効果的な対策を講じる必要があります。
専門家の意見:地方の魅力向上と雇用創出が鍵
地方創生に詳しいA大学B教授は、「地方の魅力を高め、若者にとって魅力的な雇用を創出することが重要だ」と指摘しています。具体的には、地域資源を活用した新たな産業の育成や、IT技術を活用した遠隔勤務の推進など、多様な働き方を支援する環境整備が求められるでしょう。
政府の取り組み:地方創生2.0で職場改革を推進
政府は、地方に魅力的な職場が少ないこと、男女間の待遇差、固定的な性別役割分担意識などが、女性や若者の流出の背景にあると分析しています。そこで、昨年末に決定された「地方創生2.0」の「基本的な考え方」では、男女間の賃金格差是正や、性別に関する無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)の解消に取り組むことを明記しました。関係省庁によるサポートチームも設置され、自治体や経済界と連携しながら改善策を模索していく方針です。
地方創生は、日本社会全体の持続可能性にとって重要な課題です。政府、自治体、企業、そして地域住民が一体となって、女性や若者が「選ばれる地方」を創造していく努力が不可欠です。