連邦政府のDEI(多様性、公平性、包括性)プログラム廃止というトランプ前大統領の決断は、アメリカ社会に大きな波紋を広げています。能力主義(メリトクラシー)への回帰を掲げるこの動きは、一体何を意味するのでしょうか?本記事では、DEI廃止の背景や今後の影響について、多角的な視点から解説します。
DEIとは何か?その功罪
DEIとは、Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)の頭文字をとった言葉で、職場や教育機関などにおいて、人種、性別、年齢、宗教、性的指向など、あらゆる属性の人々が平等に機会を得られるようにするための取り組みを指します。
1960年代の公民権運動から続くアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)の流れを汲むDEIですが、近年では「逆差別」を生み出す弊害も指摘されていました。例えば、大学入試において、少数派グループに有利な選考基準を設けることで、学力が高いにもかかわらず不合格となる白人やアジア系学生が出てしまうという問題です。「多様性を重視するあまり、真の公平性が見失われているのではないか?」という疑問の声も上がっていました。
alt=DEIプログラム廃止の大統領令に署名するトランプ大統領(写真:ロイター/アフロ)
能力主義への回帰:メリトクラシーの復活
トランプ前大統領は、DEIプログラムを「逆差別」の温床とみなし、廃止を決定しました。これは、能力主義に基づく社会の実現を目指すという強い意志の表れです。能力主義とは、個人の能力や成果に応じて評価や報酬を与えるという考え方で、公平で競争的な社会を築く上で重要な要素とされています。
しかし、能力主義にも課題はあります。例えば、経済的に恵まれない環境で育った人や、障害を持つ人などは、能力を発揮する機会が限られてしまう可能性があります。真の公平性を実現するためには、能力主義とDEIの理念をどのように両立させていくのか、今後の議論が待たれます。
専門家の見解:公平性とは何か?
人事コンサルタントの山田花子さん(仮名)は、次のように述べています。「DEIの理念自体は素晴らしいものですが、現実の運用においては難しい側面もあります。大切なのは、数値目標を達成することではなく、一人ひとりの個性や能力を尊重し、誰もが活躍できる環境を整備することです。」
alt=DEIに関する会議の様子(イメージ)
今後の展望:アメリカ社会はどう変わる?
DEI廃止は、アメリカ社会の価値観の転換点を示す出来事と言えるでしょう。今後、企業や教育機関は、能力主義を重視した人事・採用方針へと舵を切っていくと予想されます。同時に、真の多様性と包括性を実現するための新たな取り組みも求められています。アメリカ社会の変革は、日本を含む世界各国にも大きな影響を与える可能性があります。今後の動向に注目が集まります。