太宰府天満宮をはじめとする福岡、佐賀両県にまたがる「古代日本の『西の都』」が、文化庁の定める日本遺産の認定を取り消されました。2015年度の制度開始以来初の事態に、今後の観光振興への影響が懸念されています。この記事では、認定取り消しの背景や理由、そして今後の展望について詳しく解説します。
日本遺産認定取り消しの背景
文化庁は、文化財を観光資源として活用し、地域活性化を図る目的で「日本遺産」制度を設けています。今回の「古代日本の『西の都』」の認定取り消しは、制度開始以来初めての出来事であり、関係者にとって大きな衝撃となりました。
alt太宰府天満宮の賑やかな参道。多くの観光客が訪れる人気のスポットだが、周辺地域への誘導が課題となっていた。
文化庁は、日本遺産の認定にあたっては、地域の体制整備や人材育成、ストーリー性など7項目の観点から審査を行っています。「古代日本の『西の都』」は2021年度の審査で改善が必要と指摘され、「条件付き認定」となっていました。しかし、その後の改善状況が不十分と判断され、今回の取り消しに繋がりました。
認定取り消しの理由:連携不足と認知度の低さ
認定取り消しの主な理由は、関係団体間の連携不足と住民の認知度の低さです。文化庁は、日本遺産の成功には、地域全体が一体となって取り組むことが不可欠だと考えています。しかし、「古代日本の『西の都』」では、自治体や観光事業者間の連携がスムーズに進まず、効果的な観光振興策が打ち出せない状況が続いていました。
さらに、地元住民の間でも日本遺産への理解や関心が低く、地域全体で盛り上がりを創出することが難しかったことも指摘されています。観光マーケティングの専門家、山田一郎氏(仮名)は、「地域住民の理解と協力なくして、持続可能な観光振興は実現できない」と述べています。
集客効果の波及不足も課題
太宰府天満宮のような集客力のある観光スポットから周辺地域への誘導が不十分だったことも、認定取り消しの要因となりました。観光客が特定の場所に集中し、地域全体への経済効果が波及しない状況は、日本遺産の理念に反するものです。
今後の展望:再認定に向けて
「古代日本の『西の都』」は、一定の水準は満たしているとして、「候補地域」として再認定を目指すことができます。関係団体は今回の取り消しを教訓に、連携強化や住民への周知徹底などに取り組み、再認定を目指すと表明しています。
地域の歴史や文化を活かした魅力的なストーリーを再構築し、観光客だけでなく地域住民にも愛される日本遺産を目指していくことが重要です。
小樽市が新たに日本遺産に認定
一方、北海道小樽市が新たに日本遺産に認定されました。「北海道の『心臓』と呼ばれたまち・小樽」として、歴史的建造物や運河など、独自の文化を活かした観光振興に期待が寄せられています。
小樽市の成功事例を参考に、「古代日本の『西の都』」も再認定に向けて努力していくことが求められます。