「台湾侵攻は倫理的に正しい」習近平主席の内的心理を読み解くと見える「アメリカに対する異常なまでの恐れ」


【図表】台湾侵攻の過程

■沖縄は「太平洋の要石」

 沖縄は中国沿岸部に最も近い米軍基地が並ぶ非常に重要な島々です。中国にとって九州から与那国島の中で特に重要な出口が、大隅海峡と宮古海峡です。大隅海峡は、すべての主要港と北米を結ぶ最短経路上に位置し、常に膨大な通行量を擁します。宮古海峡は主に上海以北の港とオーストラリアを結ぶ船が通り、中国に鉄鉱石をはじめとした重要な天然資源をもたらします。

 アメリカは沖縄を「太平洋の要石」と呼んで非常に重視しています。アメリカは第二次世界大戦末期に日本本土決戦の前哨(ぜんしょう)基地として沖縄を攻略し、以降は米領に組み込みました。返還後もここには、アジア最大の米空軍基地である嘉手納基地をはじめとした在日米軍基地の7割が集中します。沖縄が「要石」である理由は、特に戦後の紛争地であった朝鮮半島、中国本土、ベトナムなどに近すぎず遠すぎないからです。

 つまり、航空機を戦場に飛ばせるほど近くても、敵国が反撃してこられない程度には遠い、ちょうど良い場所にあるのです。中国人はアメリカの爆撃機がベトナム戦争のときに沖縄から出撃したことをよく覚えています。沖縄は第一列島線の中でも、中国にとって特に大きな恐怖対象なのです。

■中国が尖閣諸島にこだわる理由

 中国が尖閣諸島を欲しがる理由にも、潜水艦が大きく関わっています。東シナ海の海底図を見ると、中国の海岸の南西には大陸棚が広がっており、水深は概ね100m未満しかありません。この大陸棚を越えると水深が一気に増す沖縄トラフがあります。さらに進むと、宮古海峡の中でも深いところに位置する回廊があり、ここを抜けると太平洋に出られます。

 台湾有事の際、中国の潜水艦は宮古海峡を出て、沖縄の南の海域で来援してくる米軍艦艇を攻撃しなければなりません。そのためには、宮古海峡の通行を安全にする必要があります。しかし、現状として、中国から宮古海峡までの航路上には尖閣諸島があり、ここは日本の支配下にあります。そこで、中国は宮古海峡までの道を安全にするため、尖閣諸島を奪わなければなりません。中国はこのために尖閣諸島沖と宮古海峡に艦船を送り、日本に圧力を加えています。

 また、中国は長期的・潜在的には沖縄から米軍が撤退することを望んでいます。沖縄にも黒潮が流れていて潜水艦探知は簡単ではありませんが、今のところ日米は技術・経験で優(まさ)っていて、中国の潜水艦をほぼすべて探知・追跡できているようです。しかし、中国は年々潜水艦の能力を向上させてきているため、注意が必要です。



Source link