M&Aで「騙された」 2.6億円を失い借金4億円…夢の隠退生活を奪われた63歳社長の悔恨


【写真を見る】最盛期には年商28億円、銀座にも店舗を構えていたが、M&Aされた途端に”経営難”に

(前後編の前編)

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後継者不在を理由に会社の売却を決意

“被害”を訴えるのは、都内在住の経営者A氏(63)である。

「転機になったのはコロナ禍でした。銀座にスマホのアクセサリーを販売する自社店舗を持っていたのですが、客足が一気に遠のいて経営が苦しくなりました」(同)

 時に、不幸は重なるものである。A氏は同じ頃、首の靭帯が少しずつ「骨化」してしまう後縦靭帯骨化症という難病指定の病気を患ってしまう。

「資金繰りの悪化に私の病気が重なって、そろそろ潮時かな、と感じていました。妻が経理担当、ほかに社員が20名という小さな会社でした。後継者といっても子どもたちは自分の仕事を持っています。事業を継承してくれる第三者に売却した方が、いつ倒れるか分からない自分よりも取引先や金融機関にとっても良いはずだと考え始めました」(同)

 ちょうどその頃、M&Aの仲介業者T社の営業担当者がたびたび会社を訪ねてきた。

「“後継者がいないのなら、売却のお手伝いをさせてください”と。熱心に営業され、条件を聞くうちに、悪くないなと。T社にM&Aの仲介をお願いすることにしたのです」

 孫に囲まれながら静かに過ごすはずだった余生を、滅茶苦茶にされてしまうなど、この時のA氏は知る由がなかった――。



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