学校の先生は子どもたちに、「みんなで、よく話し合って決めなさい」とか「話し合いでは積極的に自分の意見を発表しなさい」と指導している。その先生たちは、よく話し合い、積極的に意見を述べているのだろうか。どうも、そうではないらしい。その典型例が、職員会議だ。
学校の教職員全員が出席する場が職員会議で、「最高意思決定機関と位置づけされていた時代もありました」と30代後半の公立小学校の教員は言った。職員会議で決まったことに校長も逆らえないし、校長の方針も職員会議であっさり否定されることも珍しくなかったらしい。職員会議は強かったのだ。
ただし、いまは変わってしまった。先生が積極的に意見を述べる場ではなくなっているし、校長への異論を唱えるなど、もってのほかの場と化している。
職員会議は「校長の職務の円滑な執行を助けるもの」に
理由は、法律で位置付けられてしまったからだ。2000年に学校教育法施行規則の一部改正が行われ、それまで明確な位置づけがなかった職員会議が「校長の職務の円滑な執行に資するため、職員会議を置くことができる」とされた。
これだけではわかりにくいけれども、この法律改正に関連して各教育委員会などに向けてだされた文科省の「通知」を読めば、その狙いがはっきりとわかる。そこには、「職員会議についての法令上の根拠が明確でないことなどから、(中略)職員会議があたかも意志決定権を有するような運営がなされ、校長がその職責を果たせない場合などの問題点が指摘されている」とある。校長の意志を無視して職員会議で決めてしまうなどトンデモナイ、という前提になっている。そして職員会議を、校長の職務の円滑な執行を助けるものと位置付けたのだ。
つまり、校長に逆らって学校の方針を決めるような場ではなく、校長の「補助機関」でしかないとしている。最高意思決定機関から校長を助ける機関へと、位置づけがガラリと変えられてしまったことになる。
ただ決まったことが伝達されるだけ…
「補助機関」となった職員会議では、何が行われているのだろうか。先ほどの小学校教員は、「ただ決まったことが伝達されるだけの場です。校長と議論したり、教員同士が意見を戦わせることもありません」と説明する。「職員会議は伝達する場です」と言い切る校長も珍しくないそうだ。もはや「会議」ではなく、「伝達会」でしかない。
では、職員会議で伝達される「決まったこと」は、どうやって決められているのだろうか。それについて、「校長や教頭、一部の役職教員で構成する会で決められます」と説明してくれた。その会は企画会とか企画調整会、運営委員会など学校によって呼び方は違うらしいが、校長をはじめとする、いわゆる「幹部」だけで構成されている。「ヒラの教員のあいだでは『偉い人会議』と呼んでいます」と、小学校教員は笑った。