「オクソン姉さんに言いました。『天国に行ったらハルモニたちに、ヨンスが責任を持って(日本軍『慰安婦』問題を)解決してから行くから』と伝えてくれと言ったんです。次の大統領は誰であっても解決しなければなりません」
日本軍「慰安婦」被害者で人権運動家のイ・ヨンスさん(97)は16日、大邱市中区(テグシ・チュング)の国債報償運動記念図書館で行われた「日本軍慰安婦問題の解決に向けた新政権の役割と政策課題」と題する討論会で、このように述べた。今回の討論会は、「挺身隊ハルモニと共にする市民の会」などが主催した。
イさんは、今月11日に亡くなった日本軍「慰安婦」被害者のイ・オクソンさんの出棺時の姿を思い出しながら、もどかしさから胸を何度もたたいた。イ・オクソンさんが死去したことで、現在政府に登録されている生存被害者は6人となっている。被害者の平均年齢は95.6歳。「結局、私たちハルモニが全員亡くなるのを待っているのか。『慰安婦』問題の解決は大韓民国の自尊心の問題です」
この日の討論会では、日本軍「慰安婦」問題を韓日請求権協定第3条に則って仲裁裁判に持ち込もうと提案された。仲裁裁判とは、国家間の紛争を解決するために紛争当事国が選任した裁判官と第三国の裁判官が共同で行う裁判。
韓日請求権協定第3条は、協定の解釈と適用に関する紛争が韓日両国の外交交渉でも解決できない時は、第三国を含む仲裁委員会を設置して解決するとしている。元駐コートジボワール大使のイ・ヨンイルさんは、「この条項は『仲裁委員会』と表現しているが、構成のあり方と決定の拘束力をみれば、普通の仲裁裁判を意味すると解釈しうる」と説明した。
イ大使は「大韓民国の司法府は相次いで日本の『慰安婦』問題に対する賠償責任を認める判決を下しているが、日本政府は韓日請求権協定ですべて解決済みだと一貫して主張している。だが、この協定で規定している仲裁条項によって、『慰安婦』問題が完全に解決されているのかが問える。法律拘束力を持つ第三者的解決法である仲裁裁判は有用でありうる」と述べた。
討論者たちは、仲裁裁判は新たな代案になりうるとの意見で一致した。チェ・ボンテ弁護士(法務法人サミル)は「これまで日本の外務省は、自国議会では個人の請求権の存在を認めながら、対外的には請求権は完全にかつ最終的に解決済みであるというふうに、『二重プレー』をしてきた。仲裁手続きに突入すれば、このような『二重プレー』は防げる」と述べた。
一方、現実的な限界も指摘された。日本が仲裁裁判に応じる可能性が低いことだ。2011年に韓国政府が日本政府に、2018年に日本政府が韓国政府にそれぞれ仲裁を要請しているが、いずれも互いの要請に応じていない。キム・チャンノク教授(慶北大学法学専門大学院)は「すでに両国が仲裁を拒否したことがある状況では、日本政府が応じないことが十分に予想できる」と指摘した。
仲裁裁判は敗訴のリスクもある。キム教授は「一部敗訴などによって韓国の裁判所が確定した賠償請求権が否定される事態に耐えられるかは疑問。強制動員、独島(ドクト)問題などにも影響を及ぼすだろう」と述べた。
この日の討論会には共に民主党のハン・ジュンホ議員、祖国革新党大邱市党の委員長を務めるチャ・ギュグン議員らが参加した。
キム・ギュヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )