高齢化社会が進む日本では、高齢ドライバーによる交通事故が社会問題となっています。免許返納を促進する様々な取り組みが行われていますが、現場ではどのような状況なのでしょうか。今回は、高齢者講習の実態を取材し、免許返納を拒む高齢ドライバーの危険性について考えてみます。
高齢者講習で激昂する82歳男性
関東のある教習所で高齢者講習を取材した際、82歳の男性が教習中に激昂するという場面に遭遇しました。教習車に乗り込んだ途端、「初めての車で操作がわかるわけないだろ!」と怒鳴り声を上げたのです。教官が必死に男性をなだめるも、怒りは収まりません。どうやら、発進前の手順に手間取ったことが原因のようです。
教習を受ける高齢男性のイメージ
なんとか発進したものの、運転は危険なものでした。ウィンカーと逆方向に曲がったり、蛇行運転、逆走、S字やクランクでは路肩に乗り上げるなど、見ている方がヒヤヒヤする場面の連続でした。
講習後、記者が男性に話を聞くと、怒りは未だ収まらない様子。「教習車は初めてだし、シートベルトやギアの操作など、次々に指示されて頭に血が上った」とのこと。普段は畑作業で軽トラックを使用しており、近距離の移動ではシートベルトをしない習慣があるようです。
さらに、教習所のコースについても不満を漏らしました。「コースが狭すぎるし、他の教習車やバイクが走り回っていて危険だ。ウィンカー、一時停止、信号、横断歩道、踏切…こんな道は現実にはありえない」と主張。教官の丁寧な指導も「猫撫で声で嫌らしい。ミスを指摘するのも小バカにしているようだ」と受け取っているようでした。
免許返納を拒否する理由
この男性は認知機能検査も3度受検して、ギリギリで合格したとのこと。それでも免許返納は考えていないと断言しました。「生まれてからずっと運転している。畑仕事、スーパーへの買い物、友人宅への訪問…全て軽トラックで移動している。免許がなければ何もできない」と、生活への影響を懸念しています。
高齢者ドライバーの事故イメージ
「事故を起こしたことはあるが、死亡事故は一度もない」という男性の言葉は、多くの高齢ドライバーに共通する認識かもしれません。しかし、加齢による身体機能や認知機能の低下は避けられません。安全運転に対する意識改革と、免許返納を含めた適切な対応が求められます。
高齢ドライバーの安全対策
高齢ドライバーの安全対策として、自動車運転免許証の自主返納制度の普及促進、運転免許証更新時の講習・検査の厳格化、高齢者向けの運転支援技術の開発などが挙げられます。また、家族や地域社会全体で高齢者の運転状況を把握し、サポートしていくことも重要です。 交通事故専門家の山田一郎氏(仮名)は、「高齢ドライバー自身だけでなく、周囲の理解と協力が不可欠です。安全な交通社会の実現のため、多角的なアプローチが必要」と指摘しています。
まとめ
今回の取材を通して、高齢ドライバーの免許返納問題の複雑さを改めて認識しました。安全な運転を続けることが困難な高齢者に対して、どのように免許返納を促していくのか、社会全体で真剣に考えていく必要があるでしょう。 高齢ドライバーの安全確保は、私たち自身の安全にも繋がる重要な課題です。