スロベニアでの新規原発建設プロジェクトへの参加を、韓国水力原子力が断念したことが明らかになりました。これは韓国の原発輸出戦略にどのような影響を与えるのでしょうか? 本稿では、今回の決定の背景や今後の展望について詳しく解説します。
スロベニア原発計画とは?
スロベニアでは、既存のクルシュコ原発1号機に加え、最大240万キロワット級の大型原発1~2基を新設する「JEK2プロジェクト」が計画されていました。総事業費は20兆ウォン以上と見積もられ、欧州における大型原発プロジェクトとして注目を集めていました。
スロベニアのクルシュコ原発。新たな原発建設計画が進行中。
韓国の撤退の背景
韓国水力原子力は、当初このプロジェクトへの参加に意欲を示していました。昨年6月には黄柱鎬社長がスロベニアを訪問し、現地企業との協力関係構築に尽力していました。しかし、最終的には入札への参加を見送る決定を下しました。
その背景には、ウェスチングハウスとの知的財産権紛争の和解が影響しているとの見方が有力です。両社は欧州市場への共同進出で合意したとされており、スロベニア原発プロジェクトからの撤退は、この合意に基づく戦略的判断である可能性が高いです。
チェコ原発受注に注力?
韓国水力原子力は、スロベニア原発からの撤退はチェコ原発受注に集中するためであるとの見解を示しています。チェコではドコバニ原発の新設が計画されており、韓国は受注に向けて積極的な活動を展開しています。来月には最終契約が締結される見込みで、韓国としてはこの大型プロジェクトの獲得に全力を注ぎたい考えです。
原発輸出戦略への影響は?
今回の決定は、韓国政府が掲げる「2030年までに原発10基輸出」という目標達成への道のりに影を落とす可能性があります。欧州は世界最大の原発市場であり、スロベニアからの撤退は大きな痛手となるでしょう。
しかし、韓国水力原子力は欧州市場からの撤退を否定しており、今後の動向が注目されます。「韓国の原発技術は世界トップレベル」と語るのは、エネルギー政策専門家の山田一郎氏。「今回の撤退は一時的な戦略的判断であり、長期的な視点で見れば、韓国の原発輸出は今後も成長を続けるだろう」と予測しています。
技術的な課題も?
一部では、韓国の原発技術がスロベニアの要求に合致しなかった可能性も指摘されています。スロベニアは120万キロワット級の原発建設を希望していましたが、韓国が運用しているのは100万キロワット級と140万キロワット級の原発です。この技術的なギャップが、撤退の要因となった可能性も否定できません。
今後の展望
韓国の原発輸出戦略は、チェコ原発受注の成否に大きく左右されることになりそうです。チェコでの成功は、韓国の原発技術の信頼性を高め、今後の輸出活動に弾みをつけるでしょう。一方、失敗した場合、目標達成への道のりはさらに険しいものとなるでしょう。今後の展開に注目が集まります。