ユップ・ベヴィン 日本映画に楽曲提供 重いテーマ、静謐なピアノ響く





ピアノ奏者のユップ・ベヴィン=東京都渋谷区(石井健撮影)

 公開中の映画「楽園」(瀬々敬久(ぜぜ・たかひさ)監督)は、芥川賞作家、吉田修一の小説を原作に、地方の集落で起きた少女失踪事件をめぐる複雑な人間関係を描く。重いテーマを抱える映像に静謐(せいひつ)なピアノ演奏が寄り添う。弾いているのは、オランダのユップ・ベヴィン(43)。身長2メートルを超える極めて個性的なピアノ奏者だ。

 ベヴィンは、2017年にドイツ・グラモフォンからデビュー。クラシックの名門レーベルだが、ショパンやリストの名曲ではなく自作曲を弾く。音数が少なくシンプルきわまりない曲だ。それをベヴィンは、前面の板を外した縦型(アップライト)ピアノで奏でる。弱音用のペダルを多用しながら。すると音は響きを失い、芯だけが残る。

 「情報量を最小限にとどめ本質だけを伝えることで、音楽は聴き手にとってより親密で個人的なものになる。現代社会で疎外感や喪失感を抱えた人々は、そういう音楽を、いわば薬として必要としている。僕自身がそうだ」

 独自の理論を展開するが、実際、デビュー以来、ベヴィンの音楽は欧州の音楽配信チャートで上位を占めている。

 「楽園」は、スケジュールの都合でラストシーンの曲だけ書き下ろし、他は瀬々監督が既存曲を選んだ。初めての映画。しかも日本からの発注に戸惑ったが、「これからも取り組みたい」と大いに刺激を受けたようすだ。(石井健)



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