技能実習生不足で揺らぐ日本の農業:魅力低下で農家が悲鳴

日本の農業を支えてきた技能実習生が、今、来日しなくなっているという深刻な問題が浮き彫りになっています。特に地方の農家は、深刻な人手不足に直面し、未来への不安を抱えています。この記事では、技能実習生の減少の背景、農家への影響、そして日本の農業の未来について探っていきます。

地方の農家を襲う人手不足の波

茨城県鉾田市は、農業産出額(野菜部門)で9年連続全国1位を誇る農業の町。しかし、その輝かしい実績の裏には、技能実習生の存在が大きく関わっていました。人口約4万7000人のうち、3000人以上が技能実習生という、全国でも有数の密集地です。しかし、コロナ禍以降、状況は一変。「実習生が来てくれない」という農家の悲鳴が響き渡っています。

60代の根菜農家の三谷和明さん(仮名)は、2016年からベトナム人実習生を受け入れてきました。最盛期には4人が同時に働き、農作業を支えてくれていましたが、今はたった1人。その契約も今年の夏で終了してしまうといいます。

鉾田市の畑鉾田市の畑

ベトナム人実習生が日本に来なくなった理由

茨城県内の監理団体の職員によると、以前は実習先の所在地にこだわるベトナム人は少なかったものの、近年は「田舎は嫌だ」「寒い地域は嫌だ」という人が増加。茨城の農場は、実習先として人気がなくなってしまったそうです。かつてベトナム人が多数を占めていた鉾田市の実習生も、今ではインドネシア人が主流となっています。

日本の衰退:魅力を失いつつある実習先としての日本

技能実習生の減少は、日本の国際的な地位の低下と無関係ではありません。技能実習生の給与は、諸外国から見ると魅力がなくなり、自国の賃金水準が低い国の人しか日本に来なくなっているのが現状です。ベトナム人にとって、日本はもはや魅力的な国ではなくなってしまったのです。

送り出し機関の態度の変化

技能実習生は、自国の「送り出し機関」に応募し、日本の監理団体や農家と連携して受け入れ先が決まります。しかし、送り出し機関の対応も変化しています。

高知県で土建業を営む保岡健二さん(仮名、50代)は、以前はベトナムの送り出し機関から手厚い接待を受けていたといいます。渡航費や滞在費は全額負担、ハノイへの面接ツアーへの招待、夜の接待など、至れり尽くせりだったそうです。しかし、今は自腹で現地に行き、接待もありません。「おたくのような環境では誰も行きたがりませんよ」と、送り出し機関から突き放されることもあるといいます。

技能実習生希望者が減る一方で、日本の受け入れ希望者は増加。売り手市場の中で、日本の農家は苦境に立たされています。

日本の農業の未来

技能実習生に頼ってきた日本の農業は、今、大きな転換期を迎えています。人手不足の解消、労働環境の改善、そして外国人労働者に対する待遇の見直しなど、課題は山積みです。日本の農業の未来を守るためには、持続可能なシステムの構築が急務となっています。

農家の高齢化も深刻な問題であり、後継者不足も深刻化しています。農業の担い手を確保し、日本の食料安全保障を守るためには、抜本的な改革が必要です。技術革新、スマート農業の導入、そして若者への農業の魅力発信など、多角的なアプローチが求められています。