放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は11日、TBS系の全国ネットで昨年10月19日に放送されたバラエティー番組「熱狂マニアさん!」について、番組と広告の区別があいまいであり、放送倫理違反があったとする意見書を公表しました。この問題は、特定の商品の紹介方法が視聴者に広告と誤解される可能性が高いと判断されたものです。
問題となった番組内容とBPOの指摘
問題となった番組では、インテリア大手ニトリの多数の商品が紹介されました。放送時間のほとんどにおいて、画面左上に同社のロゴマークが表示されていた点が指摘されています。さらに、ニトリは番組のスポンサーでもあり、番組中に2回のCMが流れていました。
番組と広告の区別については、日本民間放送連盟(民放連)の放送基準において、「広告放送はコマーシャルとして放送することによって、広告放送であることを明らかにしなければならない」と明確に定められています。また、2017年には「特定の商品・サービスを扱うことは(中略)取り上げ方や演出方法などによっては、広告の意図や目的がなくても、視聴者に『広告放送』であるとの誤解を招く場合がある」との「留意事項」が公表されています。
BPO放送倫理違反が指摘されたTBS本社
BPOの意見書は、今回のTBSの番組について、以下の3点を主な理由として挙げ、放送倫理違反にあたると結論づけました。(1)番組と広告の識別に関して番組制作者の認識が甘く、視聴者から疑念を持たれる可能性が高い内容だった。(2)ニトリのCMが番組本編と直結または近接して流れたことも重なり、視聴者から疑念を持たれる可能性をさらに高めた。(3)事前の考査が十分に役割を果たせなかった。
キー局への意見と業界への課題
番組と広告の識別に関する放送倫理違反の意見書がキー局に対して出されたのは、今回が初めてのことです(ローカル局への例は過去にあります)。BPOの意見書は、「視聴者・聴取者にとって番組と広告の境目があいまいな番組を放送している局は数多く存在する。各局のこうした『横並び』が、番組と広告の境目に対する放送局の関心を低下させてきたのではないか」と述べ、業界全体の課題にも言及しています。
これに対し、TBSは、「真摯に受け止め、番組と広告の識別について番組の制作から放送に至る過程において適正な対策を講じ、視聴者の皆様の信頼回復に努めてまいります」とのコメントを発表しました。
今回のBPOによるTBSへの意見書は、特にキー局に対するものとして注目されています。番組制作における放送倫理の重要性、特に番組と広告の線引きを明確にすることの必要性が改めて浮き彫りとなった形です。放送業界全体が、視聴者からの信頼を維持するために、より一層の倫理意識向上と体制強化を求められています。