老朽化を理由に閉場した国立劇場。しかし、閉場後もファッションショーなどが開催されている現状に、疑問の声が上がっています。伝統芸能の未来への懸念と、劇場活用というジレンマに迫ります。
閉場と活用、その矛盾の背景
2023年10月、老朽化とバリアフリー対応の遅れを理由に閉場した国立劇場。しかし、新劇場建設事業者の選定は難航し、再開場の目途は立っていません。歌舞伎、文楽、日本舞踊など、日本の伝統芸能の存続に危機感を抱く声も少なくありません。
そんな中、外国人観光客向けの歌舞伎バスツアーやファッションショーなど、劇場の有効活用を目指す動きが出ています。しかし、老朽化で閉場したはずの劇場が利用されていることに、疑問の声も上がっています。
国立劇場で開催されたファッションショーの様子
独立行政法人日本芸術振興会によると、舞台機構は老朽化で使用できないものの、舞台自体は使用可能とのこと。ファッションショーでは、照明を外部から持ち込み、客席も使用せず舞台上で観覧する形式がとられました。制限が多い中でも、使える部分は活用したいという考え方が背景にあるようです。
建設費高騰と政府の文化行政への批判
新劇場建設事業者選定が難航している要因の一つとして、建設費の高騰が挙げられます。日本芸術振興会だけでは賄いきれず、国に補正予算を計上するよう働きかけを行ったものの、十分な額が確保されたとは言えない状況です。
一部では、再建の目途が立たないまま閉場した政府の文化行政の対応の遅さを批判する声も上がっています。今後の入札では、ホテル併設などの条件を緩和し、参加者の判断に委ねる方向で検討されているようです。
伝統芸能の未来への影響
閉場中は、首都圏のホールや劇場で代替公演が行われていますが、公演回数は激減しています。伝統芸能の担い手が高齢化している現状を考えると、一度途絶えてしまえば復活は困難です。日本の伝統文化を守るため、国として早急な対応が求められています。
伝統と革新の狭間で
国立劇場の建て替え問題は、日本の伝統芸能の未来を左右する重要な課題です。老朽化した施設の改修、新劇場建設の遅延、そして代替公演の難しさ。様々な課題が山積する中、伝統を守りながら新たな道を切り開く方法を模索する必要があります。
国立劇場の外観
例えば、劇場空間のデジタル化やオンライン配信による新たなファン層の獲得、若手育成への投資強化など、様々な可能性が考えられます。 伝統芸能の灯を未来へ繋ぐために、関係者だけでなく、私たち一人ひとりが関心を持ち、共に未来を考えていく必要があるのではないでしょうか。