大手ハウスメーカー「積水ハウス」から約55億5900万円がだまし取られた「地面師詐欺事件」。2017年に発覚したこの過去最大規模の詐欺事件は、ドラマ化されるほどの社会的な関心を集め、「もうええでしょう」という流行語まで生み出しました。しかし、警察による17人の逮捕と10人の起訴で捜査が一旦終結したにもかかわらず、この巧妙な詐欺の全貌は未だ解明されていないと言われています。今回、NHK総合テレビの新シリーズ『未解決事件』File.03では、この巨額詐欺事件の深層に迫り、これまで語られなかった新事実が明らかになるとして注目を集めています。
史上最大級「地面師詐欺事件」の裏側:巧妙な手口と未解明の真実
8年前、東京・五反田の広大な土地を巡り、不動産の所有者になりすました女性が、控えめな挨拶とともに名刺を受け取る様子が、ある不動産関係者によって撮影されていました。この映像は、積水ハウスを欺いた地面師グループの犯行の一端を捉えたものです。
五反田の土地取引で名刺を受け取る「なりすまし」の女性、地面師詐欺の手口を象徴する瞬間
警察の2年間にわたる徹底捜査により、主犯格を含む17人の地面師グループが逮捕され、うち10人が起訴されましたが、今回の新たな取材では、事件の「まだ地面師の一端しかとらえられていない」実態が浮き彫りになっています。これまで未解明だった詐欺の深層に迫るべく、初めてカメラの前で語られた地面師関係者や警察幹部の証言、そして詐欺の内実を示す数々の捜査情報や資料が、事件の新たな側面を提示します。
“因縁”の対面:主犯格がNHK取材班を欺いた衝撃の事実
実は、この地面師グループとNHKの取材班の間には、少なからぬ“因縁”が存在します。積水ハウスの被害が明らかになった2017年8月、警視庁捜査2課担当記者は取材を開始し、翌月には「ニュースウオッチ9」で地面師特集を放送しました。その際、匿名インタビューに応じた“事情通”こそが、後に事件の主犯格の一人とされる土井淑雄受刑者だったのです。
「ひとつの仕事が終わったら解散する。分業化されているから、ひとつの水脈が捕まっても、元々の水脈にはつながらない。蜘蛛の子を散らすように消えていく」と、事件とは無関係を装って語っていた土井受刑者。当時の記者たちは彼が事件に関与しているとは夢にも思わず、何食わぬ顔でインタビューに対応する彼の姿に、今なお「我々自身が手玉にとられていたのか?」という疑念を抱いています。なぜ彼は匿名とはいえ、堂々とテレビの前に姿を現したのか。その動機と真意は、依然として大きな謎として残されています。
今回のNHK新シリーズ『未解決事件』File.03「地面師詐欺事件」では、これまで明かされなかったこれらの疑念や未解明な真実に鋭く切り込みます。事件の全貌と、巧妙な詐欺師たちの手口、そして彼らを追う者たちの苦闘を深く掘り下げた内容は、日本の社会に潜む闇と対峙する重要な視点を提供するでしょう。
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