公務員は安定した職業というイメージが強いですが、近年は成果主義の導入が進み、状況は変わりつつあります。佐賀県で2024年に、50代男性職員2名が「能力不足」を理由に免職処分となった事例は、まさにその象徴と言えるでしょう。この記事では、この事例を基に、公務員の人事評価制度の現状と課題について掘り下げていきます。
なぜ免職処分に?佐賀県職員2名の事例
佐賀県では2024年2月、2名の50代男性職員が「能力不足」を理由に免職処分となりました。理由は、事務作業でのミス繰り返し、上司の指示に従わない、通常1週間で完了する業務に3ヶ月以上かかるなど、職務に支障をきたしていたためです。
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県は2ヶ月間の業務観察、半年間の能力向上支援プログラムを実施しましたが、改善は見られず、最終的に免職処分に至りました。この背景には、2016年度に導入された人事評価制度があります。
成果主義に基づく人事評価制度とは?
2016年の改正地方公務員法を受け、佐賀県は人事評価制度を導入しました。これは能力や実績に基づく人事管理を徹底し、住民サービス向上につなげることを目的としています。能力評価と業績評価を数値化し、5段階で評価。昇任・昇格だけでなく、免職・降格などの処分にも活用されます。
県担当者は「昭和、平成の時代は『公務員の身分は保障される』という意識が強かった。人事評価制度で良くも悪くも数字で出るようになり、処分がより公正にできるようになった」と述べています。
公務員の免職処分は増加傾向にあるのか?
総務省によると、2024年4月現在、すべての都道府県と政令指定都市が人事評価制度の評価結果を分限処分に活用しています。他の市町村でも約7割が活用しているとのこと。しかし、人事評価制度の導入が、分限免職の増加に直接つながっているとは言い切れません。
過去10年間のデータを見ると、「勤務実績がよくない」「適格性を欠く」を理由とした分限免職者数は、制度導入前後で大きな変化は見られません。公務員の身分は法律で厳格に保障されており、免職の判断は慎重になされる傾向にあります。
人事評価制度の課題と展望
早稲田大学の水町勇一郎教授(労働法)は、「法律や条例に基づいていることが大前提だが、業績や能力を適切に評価することは昨今の公務員離れを防ぐ意味でも重要だ」と指摘しています。人事評価制度は形式的に導入するだけでなく、運用方法が重要です。
佐賀県の事例は、公務員といえども「能力不足」で免職される可能性があることを示しています。人事評価制度が実質的に機能していけば、同様の事例が増える可能性も考えられます。
分限処分とは?
国家・地方公務員法上の処分です。勤務実績不良や病気などで通常の仕事がこなせない公務員に科せられます。組織としての機能維持が目的で、免職、降任、降給、休職の4種類があります。個人の責任は問われず、分限免職は懲戒免職と異なり退職金が支給されます。
公務員の未来
今後、公務員を取り巻く環境はさらに変化していくでしょう。人事評価制度の運用方法、そして公務員自身の意識改革が、より良い公共サービスの実現につながるのではないでしょうか。