路線バス後部座席の段差:快適性とバリアフリーのせめぎ合い

日本の路線バスに乗ると、後部座席に向かう途中に階段のような段差があることに気づきますよね。なぜこのような設計になっているのでしょうか?この記事では、その理由を紐解き、路線バスが抱える技術的・経済的な課題、そして快適性とバリアフリーの両立という難しい問題について解説します。

エンジン配置が生む段差の秘密

段差の直接的な原因は、エンジンの配置にあります。乗用車とは異なり、路線バスの多くは後部にエンジンを搭載しています。そのため、エンジンや変速機を格納するスペースが必要となり、床面が高くなるのです。

路線バスの後部座席路線バスの後部座席

では、なぜ後部にエンジンを配置するのでしょうか?それは、ノンステップバスの普及と深く関わっています。

ノンステップバス普及とリアエンジン方式の台頭

1990年代以降、高齢者やベビーカー利用者、障害者の方々にとって移動しやすいノンステップバスの導入が進みました。ノンステップバスは、乗降口から車内前方にかけて床を低くし、ステップをなくした設計です。

従来のボンネットバスやツーステップバスのように、エンジンを前方に配置すると、ノンステップ化が困難になります。そこで、エンジンを後部に配置するリアエンジン方式が主流となったのです。リアエンジン方式は、車内前方の床を低くできるため、ノンステップ化を実現しやすく、バリアフリー社会の実現に大きく貢献しました。

バリアフリーと快適性の両立という課題

しかし、リアエンジン方式は後部座席の段差を生み出すという課題も抱えています。段差があることで、後部座席の乗り降りは少し不便になり、特に高齢者の方にとっては負担となる場合もあります。

交通評論家の山田一郎氏(仮名)は、「バリアフリー化を進める一方で、すべての乗客にとって快適なバスを実現することは容易ではありません。段差を解消するには、新たな技術革新が必要となるでしょう」と指摘しています。

ノンステップバスノンステップバス

未来の路線バス:快適性とバリアフリーの融合を目指して

路線バスの設計は、快適性、バリアフリー、そして経済性など、様々な要素を考慮した上で決定されます。後部座席の段差は、バリアフリー化を進める過程で生まれた、いわばトレードオフの結果と言えるでしょう。

今後、技術革新によって、段差のない快適なノンステップバスが実現することを期待したいですね。