【ロンドン=板東和正】欧州連合(EU)が欧州中央銀行(ECB)や欧州各国の中銀に対し、公的なデジタル通貨の発行を検討するよう求める見通しになったことが5日、明らかになった。ロイター通信が入手した草案文書で判明した。米フェイスブックの「リブラ」などの暗号資産(仮想通貨)への警戒感が高まる中、公的機関によるデジタル通貨発行で、規制を強化する狙いとみられる。
ロイターによると、草案文書は、EU議長国のフィンランドが用意した。EU財務相理事会が8日の会合で草案文書の内容を議論し、12月にも採択される可能性がある。草案文書では、ECBと欧州各国の中銀が、デジタル通貨発行を検討することで「具体的な手段や課題などを有効的に検証することができる」と記されているという。EUはデジタル通貨発行に関し、加盟国で共通の対策を講じることも検討しているとみられる。ECBのクーレ専務理事は9月、「中銀が公的なデジタル通貨の構想を先に進めるべきだ」と強調していた。
リブラをめぐっては、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が10月に開かれ、議長国の日本は「不正利用や消費者保護のリスクに適切に対処」する準備が整わない限り、発行を認めないとする合意文書を発表。欧州でも、マネーロンダリング(資金洗浄)などのリスクについて懸念が広がっており、信頼性確保が求められていた。