青森県八戸市にある「みちのく記念病院」。地域医療の最後の砦と期待されるこの病院で、元院長とその弟の逮捕をきっかけに、信じがたい不正行為の実態が次々と明らかになっています。医療法人「杏林会」を揺るがすこの事件は、地域医療への信頼を大きく損なうものとなっています。一体何が起こっているのでしょうか?
殺人事件隠蔽から始まる悪夢
2023年3月、みちのく記念病院で起きた殺人事件。精神疾患を抱える患者が入院する病室で、アルコール依存症の男性が認知症の高齢男性を殺害するという痛ましい事件でした。しかし、病院側は事件を隠蔽。看護記録を改ざんし、遺族には「転倒」と偽りの説明をしたのです。
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さらに、遺族に渡された死亡診断書には「肺炎」と記載され、院内では「みとり医」と呼ばれていた男性患者の署名が記されていました。この「みとり医」は、認知症の疑いで入院中の元医師。意思疎通も困難な状態でありながら、医師不在の夜間に死亡診断をさせられていたというのです。
偽造診断書100枚以上押収…常態化する不正行為
警察の捜査により、病院からは「みとり医」の署名が入った死亡診断書が100枚以上押収されました。その半数以上が「肺炎」と記載されていたことから、偽造が常態化していた疑いが浮上しています。
青森県医師会関係者によると、「看護記録の改ざんや遺族への虚偽説明、偽造診断書の作成は言語道断。さらに、殺害事件の被害者の主治医には無診察治療の疑いも出ている」とのこと。
医師不在、看護師による医療行為…崩壊する医療体制
みちのく記念病院では、夜間に患者の容態が急変しても医師に連絡が取れないケースが頻発していたといいます。そのため、看護師はやむを得ず医療行為を行い、死亡時には「みとり医」に偽造診断書を書かせていたというのです。
「みとり医」は複数存在し、病院関係者が「二人羽織」で字を書かせていたという証言も。無診察治療と偽造診断書の交付は、長年にわたって行われていた可能性が高いと見られています。
医療ジャーナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「今回の事件は氷山の一角に過ぎない可能性がある。医療現場における人材不足や過重労働、倫理観の欠如など、様々な要因が複雑に絡み合ってこのような事態を招いたと言えるだろう」と指摘します。
地域医療の未来はどこへ…
みちのく記念病院の事件は、地域医療の信頼を揺るがす深刻な問題です。このような不正行為を根絶し、安心して医療を受けられる環境を整備するためには、関係機関による徹底的な調査と再発防止策の策定が不可欠です。そして、私たち一人ひとりが医療の現状に関心を持ち、より良い医療システムの構築に向けて声を上げていく必要があるのではないでしょうか。