中国、ウクライナ和平交渉への関与を模索:仲介役への強い意欲と米ロ接近への警戒

中国は、ロシアとウクライナの和平交渉において仲介役を務めることに強い意欲を示しています。習近平国家主席率いる中国政府は、この紛争への関与を通じて「大国」としての存在感を高め、戦後のロシアや欧州への影響力を保持することを狙っていると考えられます。しかし、現状では中国は交渉の蚊帳の外に置かれています。

和平へのアピールと米ロ接近への懸念

2月14日、ドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議に出席した中国の王毅共産党政治局員兼外相は、「戦争は欧州で起きている」と述べ、欧州が和平に向けて役割を果たすべきだと訴えました。王氏は会議期間中、ウクライナ、ドイツ、フランスの外相に加え、NATOの事務総長とも会談し、和平への中国の貢献をアピールするとともに、欧州の積極的な関与を促しました。

中国の王毅共産党政治局員兼外相(EPA時事)中国の王毅共産党政治局員兼外相(EPA時事)

中国のシンクタンク研究員(仮名:李氏)は、紛争の当事国ではない中国が交渉に関与するには、いずれかの国に「招待」される必要があると指摘しています。ロシア、ウクライナ、米国に加え、欧州も参加する多国間交渉の枠組みとなれば、中国が招かれる可能性も高まると分析しています。

しかし、中国は米国のトランプ前大統領がロシアと直接交渉を進めることに警戒感を抱いています。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国が過去数週間、トランプ政権にロシアとの首脳会談を行うよう働きかけていたと報じています。中国は停戦後の平和維持活動への参加にも意欲を示しているようですが、米ロの急速な接近は、中国にとって中ロ関係の「蜜月」に水を差す懸念材料となっています。

中ロ関係の強化と今後の展望

過去3年間、中国はロシアからの資源購入や軍民両用品の輸出を通じてロシアを支援してきました。ロシアが経済・安全保障の両面で中国への依存を深めている現状は、中国にとって有利な状況です。

5月には習近平国家主席がロシアの対独戦勝記念日に合わせてモスクワを訪問し、9月にはプーチン大統領が中国の抗日戦勝記念日を機に訪中する予定です。「戦勝80年」という共通の歴史を背景に、対米共闘の観点から中ロの結束をアピールする狙いがあるとみられます。

中国の仲介役としての役割は実現するか?

中国はウクライナ和平交渉への関与を強く望んでいますが、実現には多くの課題が残されています。米ロ接近への警戒感、ウクライナや欧州諸国の中国への不信感など、乗り越えるべきハードルは少なくありません。今後の中国の動向が、ウクライナ紛争の行方を左右する重要な要素となる可能性があります。