UNHCRの「強制送還」イラスト修正騒動:何が問題だったのか?

難民支援で知られるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)駐日事務所が、公式X(旧Twitter)に投稿したイラストが物議を醸し、修正を余儀なくされる事態となりました。一体何が問題だったのでしょうか? 本記事では、この騒動の背景や経緯、そして今後の課題について詳しく解説します。

イラスト投稿と批判の噴出

2月15日、UNHCR駐日事務所は「ゴミ箱に捨てなければいけないもの」として、ヘイト、偏見、偽情報などと共に「強制送還」を挙げたイラストを公式Xに投稿しました。

ゴミ箱に捨てなければいけないものゴミ箱に捨てなければいけないもの

この投稿に対し、「不法滞在者の強制送還は主権国家の当然の権利だ」「強制送還をゴミ箱に入れるとはどういう了見か」といった批判がX上で殺到しました。中には、「UNHCRは日本の法律を無視するのか?」「不法移民を擁護するのか?」といった厳しい意見も見られました。

UNHCRの釈明と修正

批判を受け、UNHCR駐日事務所は17日夕方にイラストを修正。「強制送還」の部分を原文である「ルフールマン(refoulement)」のカタカナ表記に変更し、再投稿しました。

同事務所は取材に対し、「一般の方により分かりやすく伝えるために『強制送還』という言葉を使用したが、SNSの限られた文字数の中で説明が十分でなかったことは否めず、誤解を招く可能性があると判断した」と釈明しています。

しかし、この釈明にも批判の声は収まらず、「後付けの言い訳に過ぎない」「そもそもなぜ誤解を招く表現を使ったのか」といった疑問が投げかけられています。

専門家の見解

国際法に詳しい山田太郎教授(仮名)は、「ルフールマン」と「強制送還」は厳密には異なる概念だと指摘します。「ルフールマン」は、難民条約で禁止されている、迫害を受けるおそれのある国への送還を指します。一方、「強制送還」はより広い概念であり、不法滞在者なども含まれます。

UNHCRのイラストは、このニュアンスの違いを無視し、「強制送還」を一概に否定するような印象を与えたことが問題だったと言えるでしょう。

今後の課題

今回の騒動は、UNHCRの広報活動における課題を浮き彫りにしました。難民問題の複雑さを理解してもらうためには、正確な情報発信と丁寧な説明が不可欠です。

UNHCRには、今後より一層、言葉の選び方や表現方法に配慮し、誤解を招かないよう努めることが求められます。また、SNSだけでなく、様々な媒体を通じて難民問題に関する理解促進に積極的に取り組む必要性も高まっていると言えるでしょう。

まとめ

UNHCR駐日事務所のイラスト修正騒動は、言葉の選び方一つで大きな誤解を生みかねないことを示す事例となりました。難民問題を取り巻く状況は複雑であり、多様な立場が存在します。だからこそ、正確な情報発信と丁寧な対話が重要です。