クレジットカード付帯の海外旅行保険「改悪」の実態:賢い旅の備え方

夏休みの旅行シーズンが到来し、海外への渡航を計画している方も多いでしょう。海外旅行の準備において、「保険」は万が一の事態に備える非常に重要な要素です。多くの方が海外で心強い味方となるクレジットカードを携帯していますが、実はそのクレジットカードに付帯している海外旅行保険の内容が、近年「改悪」の一途を辿っていることをご存存知でしょうか?「カード付帯の保険があるから大丈夫」と安易に考えていると、いざという時に補償が適用されない、あるいは補償額が不足するといった事態に直面するリスクがあります。

海外旅行前にクレジットカードの保険内容を確認する様子海外旅行前にクレジットカードの保険内容を確認する様子

数年ぶりに海外へ行く方や、10年以上前に取得したクレジットカードをお持ちの方は、特に注意が必要です。以前とは大きく変わってしまった海外旅行保険の現状を理解し、ご自身のクレジットカード付帯保険の補償内容や適用条件を今一度、しっかりと確認しておくことが求められています。

なぜ今、クレジットカード付帯保険の再確認が必要なのか?

クレジットカードに詳しいマネーライターの松岡賢治氏によると、クレジットカード付帯の海外旅行保険の補償内容や条件は、この10数年で目覚ましく「改悪」が進んでいると言います。一般的に海外での医療費は非常に高額になることが知られており、日本のような健康保険や高額療養費制度が基本的には適用されません。そのため、現地で入院や手術が必要になった場合、その費用が数百万円、場合によっては数千万円に及ぶことも珍しくありません。

こうした高額な医療費リスクに備えるためにも、海外旅行保険は不可欠です。しかし、過去の認識のままでいると、肝心な時に十分な補償が受けられず、自己負担で多額の費用を支払う羽目になる可能性が高いのです。

海外旅行保険の二つのタイプ:「自動付帯」と「利用付帯」

クレジットカードに付帯する海外旅行保険には、大きく分けて「自動付帯」と「利用付帯」の2種類があります。この違いを理解することが、保険が適用されるかどうかの鍵となります。

自動付帯:保有で適用されるタイプ

「自動付帯」とは、そのクレジットカードを保有しているだけで、特に条件なく海外旅行保険が適用されるタイプです。非常にシンプルで、カードを持っているだけで補償が得られるため、利用者にとっては手間がかからず安心感があります。

利用付帯:厳しい条件をクリアして適用されるタイプ

一方、「利用付帯」は、そのカードを使って特定の条件を満たした場合にのみ保険が適用されるタイプです。この条件はカード会社やカードの種類によって異なり、近年ではその条件がより厳しくなる傾向にあります。例えば、旅行に関する航空券やパッケージツアーの代金、公共交通機関の運賃などをそのクレジットカードで支払うことが条件となるケースが一般的です。以前は空港へ行くまでの電車賃でも適用されることがありましたが、現在ではNGとなるケースが増えています。

主要カードの「利用付帯」条件を具体例で確認

多くの人が利用している代表的なクレジットカードを例に、具体的な利用付帯の条件を見てみましょう。

楽天カード

  • 一般カード、ゴールドカード: 日本出国前に「募集型企画旅行の料金」(旅行代理店で予約した海外パックツアー)に該当する代金を楽天カードで支払うことが保険適用の条件です。航空券のみや、現地および国内での前泊・後泊のホテル決済だけでは保険が適用されない点に注意が必要です。
  • 楽天プレミアムカード: 「傷害治療費用」「疾病治療費用」「救援者費用」などは「自動付帯」となっています。しかし、「携行品損害」(合計50万円)のうち30万円までは自動付帯ですが、残りの20万円は日本出国前に公共交通機関のカード決済、または「募集型企画旅行の料金」をそのカードで支払った場合にのみ保険適用となります。「傷害死亡・後遺障害」も同様の利用条件を満たさないと最高金額が適用されません。

イオンカード

  • ゴールドカード、イオンSuicaカード: これらは「利用付帯」タイプです。「募集型企画旅行の料金」または日本出国前の「公共交通乗用具の料金」(電車、航空機、バス、タクシーなどの運賃)をそのカードで支払えば、保険が適用されます。
  • 一般カード: 残念ながら、一般のイオンカードには海外旅行保険は付帯していません。

まとめ:あなたの旅を守るために今すべきこと

クレジットカード付帯の海外旅行保険は、多くの旅行者にとって便利な存在ですが、その内容は年々変化し、「改悪」が進んでいるのが現状です。特に近年海外旅行の機会が少なかった方や、古いカードをお持ちの方は、出発前に必ずご自身のクレジットカードの補償内容と適用条件を再確認することが極めて重要です。

万が一、海外で医療費が高額になった際、適切な保険がなければ大きな経済的負担となる可能性があります。所有しているカードが「自動付帯」なのか「利用付帯」なのか、また「利用付帯」の場合、どのような支払い条件を満たす必要があるのかを、カード会社の公式サイトやパンフレットで詳しく確認しましょう。必要であれば、別途、単独の海外旅行保険への加入も検討し、安心安全な旅の準備を整えることを強くお勧めします。

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