お笑い芸人の千原ジュニアさん(51)が、自身の中学・高校時代のひきこもり経験について語りました。この経験から千原さんは、ひきこもりの状態にある家族を持つ人々へ「ひきこもることは悪いことではない。前向きな気持ちで待ってほしい」と力強いメッセージを送っています。
「みんなと一緒」への違和感とひきこもり開始
幼い頃から「みんなと同じが正しい」という社会の価値観に窮屈さを感じ、反発心を抱いていたという千原さん。周囲を見返したい一心で中学受験に挑み、私立の中高一貫校に進学しました。しかし、入学がゴールとなり、次第に違和感が募っていったといいます。中学1年生の後半からは学校へ行かなくなり、自室で過ごす日々が始まりました。
自室での日々:焦燥感と葛藤
ひきこもっていた約2年間は、1日が非常に長く感じられたと振り返ります。自分の家であるにもかかわらず居心地の悪さを覚え、「いつ外に出られるのか」という焦りや不安が入り交じった複雑な心境だったそうです。母親から学校へ行かない理由を尋ねられても、明確な原因が見つからず言葉にできませんでした。「もう少し待ってほしい」と願う気持ちも伝えきれず、時には苛立ちから壁を殴り穴を開けてしまったこともあったといいます。当時は親がすべてを理解している立派な存在だと思っていましたが、今振り返れば、当時の両親は千原さん自身の今の年齢よりも若く、きっと「この先どうなるのだろう」と不安を抱えていたはずだと語ります。
ひきこもり経験を語るお笑い芸人・千原ジュニアさんの肖像
祖母の言葉が拓いた「外の世界」への道
そんな千原さんにとって、唯一心を開いて話せたのが祖母でした。中学3年になる頃、「学校に行ってないなら、旅行に行こうか」と祖母に誘われ、金沢へ出かけました。兼六園でベンチに座っていると、制服姿の修学旅行生が通りかかりました。その時、祖母は目の前を歩く鳥を見つめながら、「鳥も飛んでばかりいたら飽きるから、たまには歩きたいよな」と語りかけました。この言葉は千原さんの記憶に深く刻み込まれ、外の世界に目を向ける大きなきっかけとなったそうです。
兄からの誘い:新たな一歩へ
高校に進学したものの、依然として学校へ行く気にはなれませんでした。しかし、「学校に籍があるうちは良いけれど、そろそろカウントダウンだ」という漠然とした危機感は抱いていたといいます。そんな折、兄の千原せいじさんから電話がかかってきました。「吉本(興業)の養成所に入ったんだけど、相方がいないから来い」という兄の誘いが、千原さんを新たな道へと導くことになります。
ひきこもりは決してネガティブなだけのものではなく、内省や準備期間となり得ることを千原ジュニアさんの経験は示唆しています。家族が焦らず、温かい心で本人の時間と空間を尊重し、見守ることが、社会との再接続への重要な一歩となるでしょう。
参考文献: