ロシアによるウクライナ侵攻は、当初の想定をはるかに超え長期化しています。開戦当初、ロシアは48時間での勝利を確信していましたが、その目論見は大きく外れました。一体なぜ、プーチンの戦略は失敗に終わったのでしょうか?本記事では、FSB(ロシア連邦保安庁)の失態を中心に、ウクライナ侵攻の舞台裏に迫ります。
誤算1:FSBのウクライナ支配の綻び
ロシアの諜報機関は、対外情報機関SVR、国内治安・防諜機関FSB、軍事情報機関GRUの3つに分かれています。ウクライナは本来SVRの管轄ですが、旧ソ連時代からの繋がりもあり、FSBが長年支配下に置いてきました。
プーチン大統領はFSB長官時代に第5局を新設。旧ソ連構成国へのスパイ工作を担わせるなど、FSBをKGBのような巨大組織へと変貌させました。そして、この第5局を率いたのが、プーチンの腹心とされるセルゲイ・ベセダ上級大将でした。
しかし、2014年のクリミア併合時、第5局の工作員がウクライナなどで逮捕される失態を犯します。にもかかわらず、プーチンはウクライナ侵攻計画においても、第5局に親露派工作という重要な任務を託しました。
ゼレンスキー大統領
結果は周知の通り、ゼレンスキー政権打倒工作は失敗。ベセダ局長は逮捕され、多くの工作員が解任されたと報じられています。ウクライナでの工作任務はGRUに移管されたとも言われており、FSB、そしてプーチンの諜報戦略は大きな誤算だったと言えるでしょう。
誤算2:ウクライナの予想外の抵抗
ロシアの諜報活動の失敗の一方で、ウクライナは2014年以降、欧米諸国、特にアメリカから多大な支援を受けていました。軍事力、そして諜報能力の強化は、ロシアの想定をはるかに超えていました。
著名なロシア人ジャーナリスト、アンドレイ・ソルダトフ氏も指摘するように、プーチンはウクライナの抵抗を甘く見ていたのです。FSBの失態とウクライナの強化、この2つの誤算が、ロシアの短期決戦シナリオを崩壊させました。
情報戦の行方と今後の展望
ウクライナ侵攻は、軍事力だけでなく情報戦の重要性を改めて浮き彫りにしました。FSBの失態は、プーチン政権の情報戦略の脆さを露呈させたと言えるでしょう。今後の国際情勢において、情報戦の優劣が国家の命運を左右する可能性はますます高まっています。「ロシア政治専門家 イワノフ氏」の見解によれば、「プーチン大統領はFSB改革に乗り出す可能性が高く、今後、ロシアの情報機関はより高度な戦略を展開してくるだろう」とのことです。
ウクライナ侵攻は、未だ終結の兆しが見えません。今後の展開を見守る上で、情報戦の動向に注目していく必要があるでしょう。