さよなら、ご当地発車メロディー? JR東日本、ワンマン化で廃止の危機

JR東日本の主要路線で導入されている「ご当地発車メロディー」が、存続の危機に立たされています。人手不足への対策としてワンマン運転化が進む中、車掌が押すホームのボタンが不要となり、車両備え付けの共通音楽への切り替えが予定されているためです。地域に密着したメロディーの廃止に、惜しむ声が広がっています。

ワンマン化で消える思い出の音色

3月15日からワンマン運転が開始される南武線では、川崎市多摩区の登戸駅で流れる「ぼくドラえもん」など、地域にちなんだ発車メロディーが廃止される見通しです。藤子・F・不二雄ミュージアムの最寄り駅として親しまれてきたこのメロディーは、2016年の開館5周年を記念して導入されました。ミュージアムを訪れるファンや地元住民からは、思い出の音色が消えることへの落胆の声が上がっています。

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「音楽のまち」を掲げる川崎市では、南武線の7駅でご当地メロディーを採用していましたが、すべて廃止される予定です。地域活性化にも貢献してきたこれらのメロディーの喪失は、大きな痛手となるでしょう。

発車メロディーの歴史と地域への貢献

かつての発車ベルやブザーに代わり、1989年に新宿駅と渋谷駅で初めて導入された発車メロディー。ピアノやハープを基調とした明るく爽やかな音色は、駅利用者に快適な空間を提供することを目指して開発されました。その後、全国各地の駅で導入が進み、地域に根ざしたメロディーが数多く誕生しました。

例えば、故・手塚治虫氏の仕事場があった高田馬場駅では、「鉄腕アトム」のテーマソングが採用されています。これらのメロディーは、駅への愛着を深め、地域の魅力を発信する役割を担ってきました。鉄道ジャーナリストの山田一郎氏(仮名)は、「発車メロディーは単なる合図ではなく、地域の文化を象徴する存在。その消失は、地域アイデンティティーの喪失につながる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。

ワンマン化の波は首都圏全体へ

南武線だけでなく、常磐線、横浜・根岸線、そして山手線など、首都圏の主要路線でワンマン運転化が計画されています。これに伴い、駅固有の発車メロディーは車両備え付けの共通音楽へと置き換えられる見込みです。

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JR東日本は、将来的な人手不足を見据えてワンマン化を進めていますが、地域住民からは、愛着のあるメロディーの存続を望む声が上がっています。鉄道史に詳しい中山嘉彦・大阪学院大学教授は、「駅固有の発車メロディーは利用客や地域住民の愛着につながる文化として大切なもの。廃止を惜しむ声が多ければ、復活する仕組みなどが期待される」と述べています。

未来の発車メロディーはどうなる?

利便性と地域文化の preservation の両立は、難しい課題です。今後、JR東日本がどのような対応策を講じるのか、注目が集まっています。