ホンダと日産、経営統合破談の真相:巨大自動車グループ構想はなぜ頓挫したのか?

ホンダと日産自動車の経営統合協議が、わずか1カ月余りで破談となりました。世界3位の巨大自動車グループ誕生への期待は、一体なぜ崩れ去ってしまったのでしょうか。本稿では、その背景や今後の両社の行方について詳しく解説します。

統合破談の真相:すれ違う思惑

昨年12月に基本合意に至った両社ですが、当初の共同持ち株会社方式から、ホンダが日産を子会社化する案を提示したことが、破談の決定的な要因となりました。日産側は、経営の自主性を失うことを懸念し、この提案に反発。内田誠社長は6日、統合協議を打ち切る意向をホンダの三部敏宏社長に伝えました。

日産とホンダの社長、かつては固い握手を交わしたものの…日産とホンダの社長、かつては固い握手を交わしたものの…

当初から、この統合には危うさがつきまとっていました。自動車業界の競争は、もはや規模の大きさではなく、EV技術や車載OSといったソフトウェア開発が中心となっています。米国や中国に後れをとる日系メーカー同士の統合は、「弱者連合」と揶揄されることもありました。

さらに、自由な社風のホンダと官僚的な日産という、水と油のような企業文化の違いも大きな壁となりました。加えて、日産は深刻な経営不振に陥っており、9000人の人員削減や生産能力の2割削減といった大規模なリストラ策を迫られています。

「日産にはルノーに支配されていた頃のトラウマがあり、経営の主導権を握られることに強い抵抗感がある。一方、ホンダは日産の経営状況の悪化を懸念し、持ち株会社方式では共倒れになるリスクを回避したかったのでしょう。」(経済ジャーナリスト・井上学氏)

日産の未来:単独での生き残りか、新たな買収劇か

統合破談により、日産は単独での生き残りを目指すことになりますが、販売不振に加え、古いEV技術では未来は明るくないと言わざるを得ません。このままでは、経営破綻の危機も現実味を帯びてきます。

興味深いことに、破談報道を受け、株式市場ではホンダ株だけでなく日産株も一時的に急上昇しました。これには、今後の日産をめぐる買収劇への期待が影響していると考えられます。

鴻海精密工業による買収の可能性

「今後、経済産業省が仲介役となる可能性もありますが、部品メーカーやディーラーなど関連企業が多いため、日産を見捨てることは難しいでしょう。残る選択肢は、以前から日産買収に意欲を示していた台湾の鴻海精密工業による買収です。今回の株価上昇には、鴻海によるTOB(株式公開買い付け)の可能性を見込んだ買いが入ったとみられます。」(井上学氏)

AUTOBACSのロゴ。1文字ずつに意味が込められている。AUTOBACSのロゴ。1文字ずつに意味が込められている。

まとめ:日産の茨の道

ホンダとの統合破談により、日産は茨の道へと進むことになりました。単独での生き残りは困難を極め、新たな買収劇の可能性も浮上しています。今後の日産の動向から目が離せません。