米中関係が緊迫していたトランプ政権時代、世界がその言動に翻弄される中、習近平国家主席はしたたかな対米戦略を練り上げていました。本記事では、2017年の冬季アジア大会開会式を舞台に、中国がどのようにアジア諸国との連携を深め、自国のイメージ戦略を展開したのかを紐解きます。
アジア融和をアピールする冬季アジア大会開会式
2017年2月、中国黒竜江省ハルビン市で開催された冬季アジア大会。習近平国家主席は彭麗媛夫人と共に開会式に出席し、華やかな演出の中、開会宣言を行いました。この式典にはIOCバッハ会長をはじめ、ブルネイ国王、パキスタン大統領、キルギスタン大統領、タイ首相、韓国国会議長など、アジア各国のVIPが招待されていました。
2017年冬季アジア大会開会式の様子
習近平国家主席は、「氷雪に同じ夢を見て、アジアの心を一つに同じ」という大会テーマを掲げ、アジア諸国との平和、発展、友好を強調しました。その姿は、当時のアメリカ第一主義を掲げるトランプ政権とは対照的に、アジア重視の姿勢を強く印象づけました。国際政治アナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「この開会式は、中国がアジアのリーダーシップを握ろうとする意図を示すものだった」と分析しています。
米中貿易戦争勃発と中国の対応
開会式直後、米中貿易戦争が勃発。トランプ政権が中国からの輸入品に追加関税を発動すると、中国も即座に報復関税を実施しました。中国政府関係者は、「アメリカが仕掛けた貿易戦争には断固として対抗する」と強硬姿勢を示し、必要に応じて更なる報復措置も辞さない構えを見せました。
中国の対米戦略:弱みを見せない強硬姿勢
中国政府は、トランプ政権の「予測不能性」を警戒し、あらゆる事態を想定した戦略を練っていました。「狂人」と揶揄されるトランプ前大統領には決して弱みを見せないという方針を貫き、貿易摩擦の激化に備えていたのです。
全国人民代表大会への影響懸念
中国政府が特に懸念していたのは、毎年開催される全国人民代表大会への影響でした。大会期間中に貿易摩擦が激化すれば、国内の不安定化につながる恐れがあったからです。幸いにも、トランプ政権の関税発動は大会前に実施され、中国政府は胸をなでおろしました。
巧みな外交戦略で国際社会を牽引する中国
冬季アジア大会開会式におけるアジア融和の演出と、米中貿易戦争への強硬な対応。一見相反するこれらの行動は、中国の巧みな外交戦略を反映しています。中国は、アジア諸国との連携を強化しつつ、アメリカに対しては毅然とした態度で臨むことで、国際社会における影響力を拡大しようとしています。今後の中国の動向から目が離せません。