「年収103万円の壁」見直しをめぐり、日本維新の会が対応に苦慮している。与党が提案する課税最低限の160万円への引き上げに賛同すれば、高校授業料無償化に続く「成果」をアピールできる一方、夏の参院選を控え、自民・公明両党への過度な接近は支持層にどう映るのか、難しい判断を迫られています。
吉村代表、壁見直しに前向きな姿勢も党内は紛糾
吉村代表が記者会見で発言する様子
維新の吉村洋文代表は28日、大阪府庁で記者団に対し、「政策実現が大事だ。少しでも減税するために『103万円の壁』を突破することに賛成だ」と述べ、壁見直しに前向きな姿勢を示しました。
この「103万円の壁」とは、配偶者控除や扶養控除を受けるための年収制限のこと。これを超えると税負担が増えるため、働く意欲を阻害する要因として問題視されてきました。
当初、自民・公明両党は国民民主党と協議を進めていましたが、国民民主党は非課税枠を178万円への引き上げを主張し、与党案への反対を表明。そこで与党は、維新に賛同を求める動きを見せています。
支持拡大か、自公補完勢力化か 維新のジレンマ
維新内には、与党案を受け入れれば「会社員らに幅広い減税効果が見込まれ、支持を広げられる」（幹部）との期待がある一方、かねて国民民主党の主張を支持してきた経緯もあり、党内では異論も噴出。28日の党会合では、年収要件の複雑化や中所得者への恩恵が少ないことなどを問題視する声が上がったといいます。ある党幹部は会合後、「強烈な賛成意見と強烈な反対意見が出された」と明かしています。
維新としては、政策実現による実績をアピールしたいところですが、参院選を控え、与党への過度な接近は「有権者に自公の補完勢力とみなされかねない」（中堅）との懸念も。国民民主党からも「『壁』の動かし方があまりにもせこい」（榛葉賀津也幹事長）と批判されており、難しい舵取りを迫られています。
維新、週明けにも最終決定へ 修正案提示の可能性も
会議の様子
維新は週明けにも最終的な対応を決める方針ですが、「幹部への一任を取り付けられる段階ではない」（党幹部）として、意見集約には難航も予想されます。与党案に修正を求める意見もあり、今後の動向が注目されます。
「年収103万円の壁」見直しは、働く女性やパートタイム労働者を中心に大きな関心を集めているテーマ。維新の最終決定は、参院選の行方にも影響を与える可能性があります。今後の展開から目が離せません。
