コメの価格高騰が深刻化し、家計への負担が増大しています。政府は備蓄米放出という異例の事態に踏み切りましたが、この状況を逆手に取り暗躍するのが「転売ヤー」です。彼らは一体何者で、どのように米を仕入れ、販売しているのでしょうか?日本の食卓を揺るがす闇市場の実態に迫ります。
なぜコメは高騰するのか?:需給逼迫と在庫争奪戦
2024年産米は決して不作ではありませんでした。それにも関わらず、コメ価格は高騰を続けています。都内スーパーでは5kgのコシヒカリが4000円を超えるケースも。一体何が原因なのでしょうか?
農業ジャーナリストの松平尚也氏(仮名)は、農水省による長年の需給調整政策と業者間の在庫確保競争が価格高騰の要因だと指摘します。「農水省の生産抑制政策により、供給に余裕のない状況が常態化していたところに、インバウンド需要の回復などが重なり、在庫不足に陥ったのです。これが価格高騰の引き金となり、業者間の在庫確保競争が激化、さらなる高騰を招いています。」
政府備蓄米の山。コメ不足を背景に、転売ヤーによる備蓄米の横流しリスクも懸念されている。
転売ヤーの巧妙な手口:中国人向けSNSを駆使した取引
米の流通ルートは、農家から農協、卸業者を経て市場へ供給されるルートと、農家が業者や個人と直接取引するルートがあります。千葉県いすみ市の米農家、新田野ファームの藤平正一氏によると、最近、新規の仲卸業者や米屋が直接買いに来るようになったといいます。「農協の買取価格より高値で取引する業者が増えており、転売ヤーもその中に紛れ込んでいる」と藤平氏は指摘します。
特に、中国人向けSNSでは日本の米の転売に関する情報交換が活発に行われています。「新潟コシヒカリ入荷」「千葉の米少量入荷、東京近郊配送可能」といった中国語の投稿が日々アップされています。
新田野ファームにも転売目的で米を仕入れに来た人物がいたそうです。「『5俵でも10俵でも』と大量の米を求めてきたが、断った」と藤平氏は語ります。彼らはワンボックスカーにすでに仕入れた米を積んでおり、仲間の飲食店やネットオークションで転売しているようでした。
農家の苦悩:農協と業者の板挟み
米価高騰は、農家にとっても複雑な問題です。農協の買取価格は低いままですが、販売ルートを持たない農家は農協に頼らざるを得ない状況です。「生産コストを考えると、業者に販売した方が利益は大きい」と藤平氏は話しますが、現実的には難しい選択を迫られています。
高騰するコメ、私たちの食卓はどうなる?
コメ価格の高騰は、日本の食卓に大きな影を落としています。転売ヤーの暗躍は、この状況をさらに悪化させる可能性があります。私たちは、この問題にどう向き合っていくべきなのでしょうか?
転売ヤーとの接触:闇市場の深層に迫る
実際に中国人向けSNSを通じて転売ヤーに接触を試みたところ、新潟県のスーパーの駐車場で白いミニバンに乗った男女2人組と会うことができました。女性は中国語で「どこから来たのか」と尋ねてきました。彼らは転売ヤーであることを隠そうともしていませんでした。
今後の対策と私たち消費者ができることについては、後編で詳しく解説します。