第76回紅白歌合戦、特別枠増加に賛否両論 – その「特別さ」はどこへ?

大晦日に放送される「第76回NHK紅白歌合戦」では、例年以上に「特別枠」での追加出演者の発表が相次ぎ、その内容が話題を呼んでいます。13年ぶりの出演となる矢沢永吉氏をはじめ、福山雅治氏とB’zの稲葉浩志氏によるコラボ、さらには松田聖子氏の出場も明らかになり、豪華アーティストたちが年末のテレビを彩ることが期待されています。しかし、この「特別枠」の増加に対し、視聴者からは疑問の声も上がっています。

紅白出演が発表された矢沢永吉氏紅白出演が発表された矢沢永吉氏

豪華アーティストが彩る「特別枠」の詳細

今回発表された特別枠出演者の中でも特に注目を集めているのは、福山雅治氏とB’zの稲葉浩志氏による「木星 feat. 稲葉浩志」のテレビ初披露です。この楽曲は稲葉氏が作詞、福山氏が作曲・編曲・プロデュースを手がけ、福山氏主演映画『ラストマン−FIRST LOVE−』の主題歌として既に話題となっています。B’zは2024年の紅白で朝ドラ『おむすび』の主題歌「イルミネーション」を披露し、初出場ながら大きな反響を呼びました。稲葉氏にとっては2年連続の紅白参戦となります。さらに、事前にサプライズ出演が予想されていた松田聖子氏も28日に発表され、「青い珊瑚礁」を歌唱予定です。

膨らむ特別企画、視聴者の疑問

NHKの番組公式サイトで紹介されている特別企画は、氷川きよし氏の「愛燦燦」、堺正章氏の「ザッツ・エンターテインメント・メドレー」、星野源氏の「創造」、松任谷由実氏の「天までとどけ」、玉置浩二氏の「ファンファーレ」など、これまでに8つが確認されています。今年はテレビ放送100年という記念の年ではあるものの、これほど多くの特別企画が設けられることに、SNS上では「特別枠多すぎじゃない?」「普通に出場歌手を増やしてほしい」といった違和感を示す声が多数見られます。一部の意見では、「正規の出場歌手よりも演出が凝っていたり、話題をさらったりする」と、本来の紅白歌合戦の趣旨から外れていることを指摘する声もあります。

放送作家が指摘する「特別枠」増加の背景

この特別枠の増加について、ある放送作家は「NHKとしては放送直前に“小出し”にすることで、話題を集めたいのかもしれない」と指摘しています。しかし、これらの豪華メンバーの出演は事前に決定されており、発表のタイミングが戦略的に調整されている可能性が高いとのことです。また、1990年代から2010年代にかけては50〜60組ほどいた出場歌手が、ここ5年ほどで40組前後に減少している点にも触れています。放送時間はほとんど変わらないにもかかわらず出場歌手が減っていることから、事前に「特別枠」の時間が織り込まれていると分析。これにより、本来の「歌合戦」としての紅白の魅力が薄れ、特別枠の「特別さ」も希薄になっていると現状を語っています。

「紅白歌合戦」は、元来、紅組と白組に分かれて歌唱力を競い合うというコンセプトで国民に親しまれてきました。しかし、特別枠の増加とその内容の過剰な演出は、番組本来の趣旨や、特別枠が持つはずのサプライズ感を希薄化させているのかもしれません。今後の「紅白歌合戦」が、どのようにそのアイデンティティを保ち、視聴者の期待に応えていくのかが注目されます。