日本のエネルギー政策における大きな転換点として、第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました。中でも注目すべきは、原発の「最大限活用」を掲げ、老朽化した原発の建て替えを推進する方針です。しかし、この方針転換は、本当に日本の未来にとって最善の選択と言えるのでしょうか?この記事では、原発推進に潜むリスクについて、改めて考えてみたいと思います。
地震大国・日本における原発の安全性
alt(古賀茂明氏)
日本は世界有数の地震大国です。そのため、原発の耐震性については、他の国以上に厳格な基準が求められるはずです。しかし、現実はどうでしょうか? 各原発に設定されている基準地震動は、その原発が耐えられるとされる地震の揺れの強さを示す数値です。しかし、過去にはこの基準地震動を上回る揺れが観測されたケースも少なくありません。2011年の東日本大震災では、最大2933ガルという揺れが観測されました。また、2008年の岩手・宮城内陸地震では、なんと4022ガルという、日本の観測史上最大の揺れを記録しています。
一方、民間のハウスメーカーが販売する「耐震住宅」の耐震設計基準を見てみると、例えば三井ホームでは5115ガル、住友林業では3406ガルとなっています。これらの数値と比較すると、原発の基準地震動がいかに低い水準にあるかが分かります。稼働中の原発で最も基準地震動が高い東北電力の女川原発2号機でさえ、わずか1000ガルに過ぎません。これは、民間の耐震住宅の足元にも及ばない数値です。
地震の発生場所や規模を正確に予測することは不可能です。それにもかかわらず、電力会社は自社の原発敷地内だけは大きな揺れは起こらないと主張しています。この主張には、科学的根拠に基づいた裏付けがあるのでしょうか? 専門家の中には、電力会社の主張に疑問を呈する声も上がっています。「地震予知は非常に難しい分野であり、特定の場所だけ安全だと断言することはできない」と、地震学者であるA教授は指摘します。
原発事故による損害賠償と避難計画の課題
原発事故が発生した場合の損害賠償額も、大きな問題です。国が提供する損害賠償責任保険の限度額は、原発1基あたりわずか1200億円です。しかし、東京電力福島第一原発事故では、数十兆円規模の損害が発生しました。この現実を踏まえると、現在の賠償額がいかに不十分であるかが分かります。
さらに、原発事故時の避難計画にも課題が残されています。2024年の能登半島地震では、原発事故と地震などの複合災害を想定した避難計画が策定されていないことが明らかになりました。原発事故時の避難計画は、原子力規制委員会の審査対象外となっていることが、この問題の背景にあると考えられます。 防災コンサルタントのB氏は、「複合災害を想定した避難計画の策定と、規制委員会による審査は不可欠だ」と訴えています。
未来への責任:持続可能なエネルギー政策を目指して
原発推進には、地震リスク、賠償額の不備、避難計画の不十分さなど、多くの課題が山積しています。私たちは、これらのリスクを真剣に受け止め、未来世代に安全で持続可能な社会を引き継ぐ責任があります。 再生可能エネルギーの導入促進など、原発に依存しないエネルギー政策の実現に向けて、国民一人ひとりが声を上げていく必要があるのではないでしょうか。