郵便局、それは私たちの生活に密着した身近な存在。しかし、その窓口の向こうには、想像を絶する闇が広がっているかもしれません。今回は、西日本新聞記者の宮崎拓朗氏による調査報道『ブラック郵便局』を基に、高齢者を狙った驚愕の保険契約の実態に迫ります。
70代女性、月20万円超の保険契約の罠
2019年の初夏、山口県のあるファミリーレストランで、37歳の男性が重い口を開きました。彼の71歳の母親が、郵便局員に勧められるまま、信じられないほどの額の保険契約を結ばされていたのです。
督促状から発覚した悪夢の始まり
事の発端は、母親宅の郵便受けに溜まっていた「保険料払い込みのお願い」という督促状でした。差出人は「かんぽ生命」。金額は合計42万円にも上っていました。男性が母親宅を調べると、次々と保険の証書が見つかりました。かんぽ生命の保険が8件、アフラックと住友生命の保険が3件。契約は2017年5月から始まり、毎月のように新たな契約が結ばれていたのです。
70代女性が契約させられていた保険の証書
月額保険料はなんと24万円!
男性が契約内容を詳しく調べると、月々の保険料の合計はなんと24万円にも達していました。「これは犯罪行為だ」と憤る男性は、これまでの経緯をノートに細かく記録し、民間の生命保険会社に相談しました。専門家もその異常な契約件数と金額に驚き、即解約を勧めたといいます。
郵便局のノルマとパワハラの影
なぜこのようなことが起きたのでしょうか? 背景には、郵便局員に課せられた過酷なノルマと、蔓延するパワハラがあるとされています。宮崎氏は、1000人以上の関係者への取材を通して、郵便局内のブラックな実態を明らかにしました。
良心を捨てた営業マンたち
ノルマ達成のために、郵便局員たちは倫理観を失い、高齢者のような立場の弱い顧客をターゲットに、不必要な保険契約を結ばせていたのです。中には、母親や祖母と同年代の女性を騙すことに良心の呵責を感じながらも、ノルマのプレッシャーに負けて不正を繰り返す郵便局員もいました。
巨大組織のモラルハザード
2007年の郵政民営化から18年。約2万4000局、従業員30万人超という巨大組織の中で、一体何が起きていたのでしょうか? この事件は、郵便局という身近な組織に潜む闇の深さを私たちに突きつけます。
あなたの大切な家族を守るために
高齢の家族がいる方は、今一度、彼らの保険契約内容を確認することをお勧めします。もしかしたら、あなたも知らないうちに、同じような被害に遭っているかもしれません。
この問題は決して他人事ではありません。私たちは、この問題について真剣に考え、対策を講じる必要があります。