物価高騰が続く年末、家計への負担は重くのしかかっています。こうした状況に対し、高市政権は過去最大規模となる約21兆円の「総合経済対策」を発表し、今国会での成立を目指しています。しかし、この大規模な財政出動が、冷え込む国民の生活にとって真の特効薬となるのか、早くもその実効性を巡る異論が噴出しています。
財務省案を覆した「トップダウン」決定の舞台裏
高市早苗首相(64)は先月28日、今年度の補正予算案を閣議決定しました。これに先立ち、「総合経済対策」と銘打たれた約21兆円もの大型財政出動も閣議決定。一般会計の歳出総額は約18兆円に上り、これはコロナ禍以降で過去最大の予算規模となります。特筆すべきは、高市首相が財務省が提示した17兆円規模の予算案を突き返し、トップダウンでこの規模の対策を決定したことです。
その内訳を詳細に見ると、「電気・ガス料金の補助」に5296億円、「子育て応援手当」に3677億円が充てられています。特に注目すべきは、地方自治体が地域の実情に応じて活用できる「重点支援地方交付金」で、今年度の追加分として2兆円が拡充されました。政治部デスクは、「端的に言えば、都道府県の各自治体が地域の実情に応じて生活者・事業者への支援を行える資金です。国は生活者支援に向けて五つのメニューを提案していますが、その目玉となるのが『食料品の物価高騰に対する特別加算』。いわゆるお米券やプレミアム商品券、電子クーポンなど、各自治体が判断して住民に支援を行う形になっています」と解説しています。
片山さつき財務相と高市早苗首相
「お米券」の効果に疑問符~元農水官僚が指摘
新米が出そろったにもかかわらず、11月17日~23日のコメの平均価格は5キロあたり4312円と過去2番目に高い水準を記録しています。こうした中、食費の負担軽減策として国が提案する「お米券」が議論の的となっています。元農水官僚である鈴木憲和農水相が、高止まりするコメ価格対策として盛んに言及していますが、元農水官僚でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏は、そもそも物価高対策として機能しないと指摘します。
山下氏によると、「政府が推奨する『お米券』の配布金額は、一人当たり3000円になるといわれています。国民一人当たりのコメの年間消費量は約50キロで、現在の米価に換算すると年間4万~4万5000円ほどです。たとえお米券をもらったところで、5キロのコメ一袋も買えませんから、ほとんど意味がありません」と述べ、その実効性に疑問を呈しています。
さらに山下氏は、鈴木農水相が積極的にお米券を推奨する背景には、JA(全国農業協同組合連合会)の利益構造があると考えています。「国が減反して米価を高くしておきながら、それを下げないまま消費者に買ってもらうことで、最終的に儲かるのはJAです。彼らに高値でコメを買ってもらう兼業農家などは、サラリーマンとしての給料もJAバンクに預けている。今や107兆円の預金の多くをウォール街で運用して高い収益を上げているようですから、この構図を維持するためにも米価を高く保つことが必要なのです」と、JAが高米価を維持する経済的動機について分析しています。
高市政権の「総合経済対策」は、国民の生活を支援するための大規模な試みですが、その効果、特に「お米券」のような具体的な施策の実効性については、専門家からの厳しい目が向けられています。凍てつく庶民の懐を温める真の対策となるのか、今後の展開が注目されます。





