「正社員になり定年まで」は昭和の頃から「少数派」だった…日本人が勘違いしている「驚きの真実」


【写真】「正社員になり定年まで」は昭和の頃から「少数派」だったという意外な真実

社会学者・小熊英二さんが、硬直化した日本社会の原因を鋭く分析します。

※本記事は小熊英二『日本社会のしくみ』(講談社現代新書、2019年)から抜粋・編集したものです。

「昭和の人生すごろく」

都市部の人々がイメージする「ふつうの暮らし」は、こんな感じかもしれない。男性ならば、高校か大学を出て、会社に入り、結婚し、子どもが生まれ、ローンで家を買い、定年まで勤め、年金で老後をすごす。女性ならば、そういう男性の妻になる。

しかし実際には、そんな生き方は、多数派ではない。しかもそれは、昔から多数派ではなかった。

2017年に、「経産省若手プロジェクト」が作成した「不安な個人、立ちすくむ国家」という文書が評判になった。文書のファイルが、150万回以上ダウンロードされたという。

その文書に、「昭和の人生すごろく」というページがある。「新卒一括採用」で「正社員・終身雇用」になる人生とされている。

それによると、「正社員になり定年まで勤めあげる」という生き方をした男性は、1950年代生まれで34%だった。これが1980年代生まれでは、27%になると推計されている。

ここで重要なのは、「昭和の時代」でも34%にすぎなかったことだ。

これは、執筆者たちにとって意外だったという。彼らの1人は、こう述べている。

「典型的な人生だと思っていた数字が、どう計算してもそれ以上にはならない。当然もっと高い数字が上がってくるだろうと思っていましたから、みんな『自分たちは分かってなかったんだ』とショックを受けました」。

「正社員になり定年まで勤めあげる」という生き方は、日本社会の約3割にすぎない。では、そのほかの人は、どういう生き方をしているのか。

もちろん、人生の種類はさまざまだ。しかしここでは、現代日本での生き方を、「大企業型」「地元型」「残余型」の3つの類型にわけて考えてみたい。



Source link