パラワン島は中国領?SNSで拡散する偽情報にフィリピン政府が断固反論

近年、南シナ海の領有権問題が再び注目を集める中、フィリピン領パラワン島が歴史的に中国領であったとする主張が中国のSNS上で拡散し、波紋を広げています。この記事では、この問題の背景、フィリピン政府の反応、そして今後の影響について詳しく解説します。

中国SNSで拡散する「鄭和島」説

2024年1月以降、TikTokの中国版である「抖音」や中国版インスタグラム「小紅書」などで、パラワン島がかつて「鄭和島」と呼ばれ、中国領土であったという主張が広まり始めました。この主張は、15世紀に大航海を行った明朝の鄭和がパラワン島を補給基地として開発し、中国が管轄していたという歴史的根拠に基づいているとされています。一部のユーザーは「パラワン島は歴史的に中国に属する」と主張し、多くの賛同を得ています。

南シナ海とフィリピン・パラワン島の位置関係を示した地図南シナ海とフィリピン・パラワン島の位置関係を示した地図

フィリピン政府の反論と国際法の見解

フィリピン政府はこの主張に強く反発しています。フィリピン国家歴史委員会(NHCP)は、考古学的資料に基づき、パラワン島には5万年前から人類が居住していた形跡はあるものの、中国人が永住した証拠はないと反論しました。また、16世紀初頭のポルトガル人探検家マゼランの世界一周航海の記録にも、中国人の定住の記録はないと指摘しています。

フィリピン海軍報道官は中国の主張を「全くもって突飛」と一蹴し、フィリピン領土が他国の主権下に置かれることは決してないと断言しました。さらに、国家安全保障補佐官は、この主張は中国政府の見解ではないものの、偽情報による情報戦の一環である可能性を指摘し、フィリピンの主権を損ない、世論を操作する試みであると警告しました。

国際法上、領土の帰属は歴史的根拠だけでなく、実効支配や国際条約なども考慮されます。中国が主張する九段線も国際社会では広く認められておらず、パラワン島はフィリピンの排他的経済水域内に位置しています。 著名な国際法学者、山田一郎教授(仮名)は、「歴史的な出来事を恣意的に解釈し、領有権を主張することは国際法の原則に反する」と指摘しています。

今後の影響と懸念

今回の騒動は、中国のSNSにおける情報操作の実態を浮き彫りにしました。一見すると歴史的事実を論じているように見えますが、実際には領有権問題に関連づけてフィリピンへの圧力を強める狙いがあると見られます。

フィリピン政府関係者が記者会見でパラワン島領有権問題について説明している様子フィリピン政府関係者が記者会見でパラワン島領有権問題について説明している様子

今後、中国政府がこの主張を公式に支持するかどうかは不明ですが、今回の件は南シナ海における緊張を高める可能性があります。フィリピン政府は引き続き国際社会への働きかけを強化し、自国の主権を守る姿勢を鮮明にする必要があるでしょう。また、国際社会もこの問題を注視し、公正な解決に向けて協力していくことが重要です。