【浦項の鉄鋼業】米国の関税爆弾で揺らぐ鉄の街、その未来は?

浦項(ポハン)といえば、韓国を代表する鉄鋼都市。しかし今、この街は大きな試練に直面しています。米国の鉄鋼関税発動、中国の低価格鉄鋼攻勢、そして国内の建設景気低迷という三重苦。街の活気を支えてきた鉄鋼業の衰退は、地域経済全体を揺るがしています。今回は、苦境に立たされた浦項の現状と未来への展望を探ります。

米国関税発動、浦項に暗い影を落とす

2018年、米国が輸入鉄鋼に追加関税を発動。この決定は、輸出依存度の高い浦項の鉄鋼業に深刻な打撃を与えました。鉄鋼産業団地では、稼働を停止した工場や、荷物を積むことなく路肩に停まるトラックが目立ちます。「以前はこんな光景、見られなかったのに…」と、10年以上運送業を営むキム・ミンソプ氏(54歳)は嘆きます。

alt浦項の鉄鋼産業団地で荷台が空のまま路肩に駐車している大型トラック。alt浦項の鉄鋼産業団地で荷台が空のまま路肩に駐車している大型トラック。

浦項鉄鋼産業団地管理公団の発表によると、2017年と比較して2018年の生産実績、輸出実績ともに減少。この状況を受けて、ポスコや現代製鉄といった大手鉄鋼会社も規模縮小を余儀なくされています。現代製鉄は浦項第2工場の稼動を事実上中断し、希望退職も募集。ポスコも製鋼工場や線材工場を閉鎖しました。

地域経済への影響は深刻、サービス業にも波及

鉄鋼業の不振は、地域経済全体に暗い影を落としています。浦項の製造業において鉄鋼関連業が占める割合は70%に達するため、鉄鋼業の衰退は雇用減少、消費萎縮といった二次被害へと連鎖。飲食店などのサービス業にも大きな影響を与えています。

浦項ターミナル近くの飲食店主は、「孝子洞(ヒョジャドン)だけでも60軒以上の店舗が売りに出されている」と窮状を訴えます。「鉄鋼会社社員は良い顧客だった。今後どうなるか…」と不安を隠しきれません。

専門家の見解

鉄鋼業界アナリストの田中一郎氏(仮名)は、「米中貿易摩擦の激化や世界的な鉄鋼需要の減少など、浦項を取り巻く環境は厳しさを増している。生き残るためには、高付加価値製品の開発や生産性向上によるコスト削減が不可欠だ」と指摘しています。

浦項の未来、活気を取り戻すために

浦項市は、政府に対し積極的な支援を求めています。李康徳(イ・ガンドク)市長は、関税問題の解決に向けた戦略策定、緊急金融支援、税制優遇などを政府と与野党に要請。鉄鋼産業の競争力強化に向けた長期的支援も訴えています。

ポスコ関係者は、「高付加価値製品の開発や品質向上に注力し、製造原価の革新を進めることで、厳しい外部環境でも競争力を確保していきたい」と述べています。

浦項の挑戦

苦境に立たされた浦項ですが、活気を取り戻すための挑戦も始まっています。例えば、新たな産業の育成や観光資源の開発など、鉄鋼業に依存しない地域経済の構築を目指した取り組みが進められています。

未来への道のりは険しいですが、浦項の人々は諦めていません。鉄鋼業の再生、そして新たな産業の創出を通じて、再び力強く立ち上がることを目指し、挑戦を続けています。