ODよりSD?若者の薬物乱用問題に厚労省が挑む異色の啓発広告が話題に

若者の間で深刻化する薬物乱用、いわゆるオーバードーズ(OD)。この社会問題に対し、厚生労働省が打ち出した啓発広告が大きな波紋を呼んでいます。今回は、その広告の内容と、それを取り巻く様々な意見について詳しく見ていきましょう。

羊のキャラクターとキャッチーなフレーズが賛否両論

altalt薬の瓶とスマートフォンを手にした羊のキャラクターが登場するアニメーションCM。軽快な音楽と共に「ODするよりSDしよう。相談しよう」というキャッチーなフレーズが繰り返されます。この「SD」とは、相談(Soudan)の略。ODに悩む若者に、相談窓口の存在をアピールする狙いがあります。

この広告は、政府広報の公式X(旧Twitter)で公開されるやいなや、500万回以上の再生回数を記録。他の投稿に比べ圧倒的な注目を集めました。しかし、その反響は賛否両論。

批判的な意見

韻を踏んだキャッチーなフレーズや、軽快なトーンに対し、「ODの深刻さを軽視している」「安易な表現で問題の本質を捉えていない」といった批判の声が上がっています。薬物乱用は深刻な問題であり、安易な言葉遊びで片付けるべきではないという意見も少なくありません。

擁護的な意見

一方で、「若者に届けるためには、このようなキャッチーな表現が必要」という擁護の声も存在します。堅苦しい表現では若者の心に響かず、かえって逆効果になる可能性もあるという考え方です。

厚労省の担当者に聞く、広告制作の意図

altalt広告の真意を探るべく、厚生労働省の担当者に取材を行いました。担当者は、「若者のOD問題を深刻に捉え、相談支援につなげたいという思いで制作した」と説明。Xの投稿から、厚労省のウェブサイトに遷移できるようになっており、そこではODに関する詳しい解説や相談窓口の情報が掲載されています。

なぜ羊のキャラクター?

羊のキャラクターを採用した理由については、特に深い意味はなく、キャッチーさを重視した結果とのこと。睡眠薬との関連性を疑う声もありましたが、担当者はそれを否定しています。

専門家の監修は?

広告制作には、医師免許を持つ職員を含む厚労省内部のチェック体制に加え、政府広報として内閣府の管理下で広告会社に委託する形で行われたとのこと。複数の専門家が監修した啓発資料もウェブサイトに掲載されており、より詳細な情報を得ることができます。

広告の効果と今後の課題

今回の広告は、確かに多くの人の目に触れ、OD問題への関心を高めるという点では一定の成果を上げたと言えるでしょう。しかし、批判的な意見も踏まえ、今後どのように啓発活動を進めていくかが課題となっています。薬物乱用問題の解決には、関係各所の連携と、多角的なアプローチが不可欠です。

日本薬科大学 薬学部教授の山田一郎氏(仮名)は、「薬物乱用問題への啓発は、若者の心に響くメッセージと、適切な情報提供のバランスが重要」と指摘しています。今回の広告が、今後の啓発活動のあり方を考える上で、一つの契機となることを期待したいところです。