参院選を控え、自民党の鶴保庸介参院予算委員長が和歌山市での会合で述べた「運のいいことに能登で地震があった」との発言が大きな波紋を広げている。この問題発言に対し、フリーアナウンサーの羽鳥慎一氏が自身の番組で強い失望感をあらわにした。
鶴保氏は8日、和歌山市で開催された参院選和歌山選挙区の自民党候補者の会合に出席し、あいさつの中で発言を行った。「2拠点地域居住」の推進について触れる中で、昨年元日に発生した能登半島地震を巡る政府の対応に言及。「総務省はこういう時には立ちはだかって反対するが、今回に至っては本当に協力的でした。むしろ率先してやってくれたと言ってもいい」と述べた後、問題の「また、運のいいことに能登で地震があったでしょう?」という言葉を発した。これは、地震発生後、被災者らが住む地域以外でも住民票の写しを取得できるようになったことなど、政府が地方創生の一環で進める取り組みの具体例として挙げられたものだった。鶴保氏はさらに「能登で地震があった時に、地震の、上の方であったのは、あの、輪島とか、あの…たま…なんだっけ、上の方ね。能登半島の北の方。そういう地域で」と続けた。「たま」は、地震で甚大な被害を受けた珠洲市を念頭に置いた発言とみられている。
この発言は、能登半島地震で甚大な被害を受け、今なお困難な生活を送る被災者の心情に全く寄り添わない内容として、強い批判を浴びている。鶴保氏は発言当日の深夜にこれを撤回し、陳謝するコメントを発表。翌9日には和歌山市内で記者会見を開き、改めて謝罪と発言撤回を表明した。自民党内では、参院選の選挙戦全体に悪影響が及ぶことを懸念する声が広がっている。
フリーアナウンサー羽鳥慎一氏の画像 発言を厳しく批判
9日に放送されたテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」に出演したMCの羽鳥慎一氏は、この鶴保氏の発言について言及。番組では、鶴保氏の発言時の様子をVTRで紹介した上で、羽鳥氏はまず「表現として、まったく間違っていると思います」と、発言の不適切さを明確に指摘した。
特に、珠洲市を念頭に置きながらも「たま…なんだっけ」と言葉に詰まった鶴保氏の様子について、羽鳥氏は強い失望感をあらわにした。「(能登半島地震に)あまり関心がないんでしょうね。被害に。たま、たま…、なんだっけと。あれは珠洲市のことでしょう。珠洲市の漢字を『たま…、ああ、わかんないな』と。もう、それくらいの感覚なんでしょうね」と、静かながらも怒りがにじむ口調で批判を展開。被災地の名前すらおぼつかない点に、被災状況への関心の薄さを読み取れると厳しく指摘した。
番組の最後、羽鳥氏は今回の発言がもたらす影響について触れ、「こういう発言は本当に、微妙に(情勢に)影響してくるんだろうな、というふうに思います」と述べ、参院選を控えた情勢に対する懸念を示唆した。政治家の失言が選挙戦に与える影響の大きさを改めて強調する形となった。
今回の鶴保氏の発言は、被災者への配慮を欠いたものとして国民からの批判を集めるだけでなく、選挙を戦う自民党にとっても痛手となる可能性が指摘されている。
[出典] Yahoo!ニュース / 日刊スポーツ