参政党、参院選で支持率急伸 その背景と戦略

2025年7月3日に公示された参院選において、参政党が注目すべき支持の伸びを見せている。東京・新橋駅前などでの街頭演説では「日本人ファースト」のスローガンを前面に押し出しているが、一方で「外国人政策」など一部で反発を招きやすいテーマについては刺激的な言及を避け、外国企業誘致といった経済問題に重点を置く戦略への修正を図っている模様だ。

参政党の神谷宗幣代表(47)は、党の支持率が急伸している要因として、全国に根差した約150人の地方議員と約7万人の党員からなる地方組織が「機能し始めた」ことを挙げている。党は今回の参院選で現在の1議席から一気に10議席への拡大を目指し、既存政党が膠着状態にある国政の場で「キャスティングボード」、すなわち政局の鍵を握る存在となることを目標に掲げている。7月7日夕刻、秋田駅前にて街頭演説に立った神谷代表は、黒いポロシャツ姿で聴衆に語りかけた。「今回の選挙は分岐点です。混乱はあっても、政界を一度ミックスしなければなりません。参政党がそのような台風の目になれればと考えています」。さらに、前夜に発表された共同通信の世論調査結果に触れ、「新聞を見てびっくりしたわけですよ。『参政党が自民党を脅かしている』って。支持率を見たら確かにそうですよ。仲間もみんなびっくりして。何も特別なことをしていない。マンガみたいな話ですよ、ホントに」と述べ、自党の躍進に対する驚きを率直に表現した。この共同通信による7月5日、6日の調査では、参院選の比例区の投票先として参政党が8.1%の支持を得ており、前回調査(6月28日、29日)から2.3ポイント上昇し、国民民主党(6.8%)、立憲民主党(6.6%)といった野党第一党とされる勢力を上回る結果となった。

2025年参院選公示、東京新橋駅前で街頭演説する参政党の神谷宗幣代表2025年参院選公示、東京新橋駅前で街頭演説する参政党の神谷宗幣代表

地方議会選挙での連続トップ当選とその影響

神谷代表が参院選公示直前のインタビューで強調した通り、この5年間、党員たちが地道に築き上げてきた地方組織の力が、今回の全国的な支持率向上に繋がっている可能性が高い。参政党は神谷氏が事務局長を務める形で2020年4月に結党された。2022年の参議院選挙では全国で170万票以上を獲得し、神谷氏が比例区で初当選を果たした。続く2024年の衆院選では3議席を獲得するなど、国政での議席を伸ばしている。これと並行して、党は地方組織の強化を積極的に進めてきた。その成果は、2025年6月15日に実施された福井県あわら市議会議員選挙(定数16)、兵庫県尼崎市議会議員選挙(定数42)、愛知県西尾市議会議員選挙(定数30)において、参政党公認の新人候補がいずれも最多得票で当選したことからも明らかだ。さらに、その後の東京都議会議員選挙でも公認候補4人中3人が当選を果たすなど、地方での浸透が進んでいる。現在、参政党の地方議員は全国で150人、党員数は約7万人に上るとされている。また、全国の衆議院小選挙区289のうち、287の選挙区に支部が設置されており、組織の基盤は着実に拡大している。今回の参議院選挙では、選挙区に45人、比例代表に10人の候補者を擁立し、全国規模での議席獲得を目指している。

「日本人ファースト」を掲げ、東京・銀座で演説する参政党神谷宗幣代表「日本人ファースト」を掲げ、東京・銀座で演説する参政党神谷宗幣代表

神谷代表自身の経歴も興味深い。福井県高浜町出身の神谷氏は、2007年に大阪府吹田市議会議員に初当選し、2期務めた。その後、2012年(安倍政権時)には自由民主党公認候補として大阪13区から衆院選に立候補したが落選。2015年の大阪府議会議員選挙にも無所属で立候補したが再び落選しており、一度は政治家としての道を諦めかけた経験も持つという。これらの経験が、現在の参政党の組織運営や戦略に影響を与えているのかもしれない。

まとめと今後の展望

2025年参院選において参政党が示す支持率の急上昇は、単なる一過性の現象ではなく、党が地道に構築してきた地方組織の活動と、時宜を得た選挙戦略の調整が結びついた結果と言えるだろう。共同通信の世論調査で野党主要政党を上回る支持を得たことは、党の認知度向上と潜在的な支持層の広がりを示唆している。地方議会選挙での連続トップ当選に見られるように、草の根レベルでの活動が全国的な注目へと繋がりつつある。神谷代表が掲げる「キャスティングボード」を握るという目標は、今回の参院選の結果次第では現実味を帯びてくる可能性もある。

参考資料