フランス、核抑止力「欧州全体で」 マクロン大統領表明、ウクライナ危機受け対米依存脱却へ

フランスのマクロン大統領は2025年3月5日、テレビ演説で、フランスが保有する核兵器による抑止力を欧州全体で運用するための議論を開始する意向を表明しました。ロシアのウクライナ侵攻を受け、揺らぐ欧州の安全保障体制。米国への依存を脱却し、欧州主導の防衛力強化を目指すマクロン大統領の決断は、一体何を意味するのでしょうか。

ウクライナ支援と欧州の安全保障:マクロン大統領の決意

マクロン大統領は演説で、ウクライナの抵抗を支援し続けると明言。ロシアとの和平交渉において、ウクライナが望む安全保障の保証を支援する姿勢を強調しました。同時に、ロシアの軍事力増強を念頭に、欧州諸国が自国を守り、更なる侵略を抑止する必要性を訴えました。

altaltマクロン大統領のテレビ演説の様子。欧州の安全保障強化への強い意志が感じられる。 (ロイター通信)

そして、英国と並ぶ核保有国であるフランスとして、「抑止力によって欧州の同盟国を守るための戦略的議論を開始する」と宣言。これは、これまで米国に依存してきた欧州の防衛体制を見直し、欧州独自の安全保障 framework を構築する意思表示と言えるでしょう。

米国の動向と欧州の自立:新たな安全保障戦略の模索

トランプ米大統領のウクライナ支援への消極的な姿勢も、マクロン大統領の決断を後押ししたと考えられます。「米国が我々の側にとどまることを信じたい。だが、そうでない場合の備えも必要だ」と述べ、防衛・安全保障における欧州の自立性を強化する必要性を強調しました。

フランスは約290発の核弾頭を保有し、潜水艦や航空機で運用しています。この核抑止力を欧州全体で共有する構想は、欧州の安全保障戦略に大きな変化をもたらす可能性があります。国際安全保障の専門家、田中一郎氏(仮名)は、「フランスの核共有構想は、NATOを中心とした既存の安全保障体制に一石を投じることになるだろう」と指摘しています。

欧州の結束と今後の展望:有志国連合による平和維持活動

マクロン大統領は、10日以降に有志国の軍司令官をパリに招集し、具体的な方策を協議する方針を明らかにしました。2日にロンドンで開催された欧州各国首脳会議では、フランス、英国を中心に有志国連合を形成し、停戦後のウクライナに平和維持部隊を派遣することで一致しています。

6日にはブリュッセルで欧州首脳会議が開かれ、ウクライナのゼレンスキー大統領も参加し、欧州とウクライナの安全保障について議論が行われます。しかし、ロシア外務省はマクロン大統領の核抑止力に関する発言を批判しており、今後の展開は予断を許しません。

欧州の核共有:課題と期待

フランスの核抑止力共有構想は、欧州の安全保障を強化する上で重要な一歩となる可能性があります。しかし、核兵器の管理や運用、NATOとの関係など、解決すべき課題も多く残されています。

今後の議論の行方次第では、欧州の安全保障体制が大きく変わる可能性も。欧州各国の思惑が交錯する中、マクロン大統領の提案がどのような未来を描いていくのか、注目が集まります。