谷中「夕やけだんだん」景観激変:マンション建設が愛された風景にもたらす影響

2025年11月26日にX(旧Twitter)に投稿されたある画像が、大きな反響を呼んでいます。東京都台東区と荒川区にまたがる谷中銀座商店街へと続く階段、通称「夕やけだんだん」は、美しい夕焼けと下町の風情を一望できる場所として長く親しまれてきました。しかし、その名所の景観が激変し、多くの人々から惜しむ声が相次いでいます。地元住民や自治体への取材を通じ、この変化がもたらす影響を深く掘り下げます。

「夕やけだんだん」とは:日暮里に息づく下町情緒の象徴

「夕やけだんだん」は、JR日暮里駅から徒歩約5分の場所に位置する、谷中銀座商店街への入り口となる階段の愛称です。古くはお寺の境内の一部であったとされ、その名の通り、階段の上から望むことができる壮大な夕焼けの景色で有名です。この場所は、地元住民はもちろんのこと、日本国内外から訪れる観光客にとっても、谷中の象徴的な風景として深く愛されてきました。その独特の雰囲気は、多くの人々に安らぎと感動を与えてきました。

マンション建設がもたらす景観の変化と住民の懸念

この愛されてきた「夕やけだんだん」の隣で進むマンション建設が、景観に大きな影響を与えています。Xには「ここの雰囲気は唯一無二だったのに」「とても残念です」といった、失われゆく風景を惜しむ声が多数寄せられています。現地を訪れると、建設中のマンションを囲む灰色の養生幕が階段のすぐ横にそびえ立ち、以前とは大きく様変わりした様子がうかがえました。谷中銀座商店街は相変わらず多くの人々で賑わい、特に外国人観光客の姿が目立ちますが、彼らの目に映る風景は過去とは異なるものとなっているでしょう。

景観が激変した谷中の夕やけだんだん景観が激変した谷中の夕やけだんだん

地元住民が語る複雑な胸中と「圧迫感」

階段の近くで数年前から営業するベーカリーの店員は、「客足は以前と変わっていませんが、マンションの建設が始まってから、少し店内が暗くなってしまい、階段の上から夕やけも見られなくなってしまいました」と、日々の変化を語ります。

商店街の台東区側でバーを営む女性は、このエリアの複雑な行政区分に触れつつ、次のように胸の内を明かしました。「ここはちょうど荒川区と台東区が近接するエリアで、商店街のお店も片側は荒川区、もう片側は台東区と、二つの区にまたがっているんです。坂の上の七面坂方面からは今でも夕やけが見られるので、私はそちらから夕やけを見ています。『夕やけだんだん』という愛称の場所から夕やけが見られないのは、悲しいかぎりです。建設が進むにつれてマンションは日に日に高くなっていき、圧迫感は否めません。ここまで高いとは思いませんでした。下町風情が残る谷中銀座に塀ができたように感じています」。彼女の言葉からは、長年親しんできた風景が失われることへの深い寂しさと、開発への複雑な感情がにじみ出ています。

一方で、商店街で古くから営業する精肉店の店員は、諦めたような表情でこう話しました。「ずっと前から工事をやってるのに、なんで今頃になって騒いでるんだろうね?仕方ない。『なるようになる』だよ」。この言葉は、開発の波に逆らえない現実を受け入れるしかないという、古くからの住民の諦念を表しているのかもしれません。

開発と景観保全の狭間で:夕やけだんだんの未来

「夕やけだんだん」の景観変化は、都市開発と地域固有の文化・景観保全のバランスの難しさを浮き彫りにしています。高層マンションが立ち並ぶことで利便性が向上する一方で、長年人々が愛してきた風景や下町情緒が失われることは避けられない現実です。今後、谷中の街並みがどのように変化していくのか、そして住民や訪問者がこの変化とどう向き合っていくのか、その動向が注目されます。